P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-46
○ リプレースメントとイノベーション
現在の事業の質を高めるには、よりよく行えばよい。
しかし、そもそも行うべき新しいことは何か。
二つの種類の機会がある。
● 製品と活動をより適切なものに替えるリプレースメント。
● 最大の機会を実現するイノベーション。
わずかな変更を施すことによって、製品と活動を理想企業の設計に適合
するものに替えることこそ、きわめて高い優先度に値する。
リプレースメントと開発との相違は、前者が、何が市場であり、何を市場が
求めているかについての新しい考え方や、知識の新しい利用の仕方に関わる
ものであるところにある。
新しい梱包資材の開発は、その設計や生産がいかに技術的に困難であろう
とも開発である。しかし、貨車用やトラック用のコンテナの利用は、梱包に
ついての新しい考え方であり、リプレースメントである。
スローンによるGMの設計においては、古くからの低価格帯の三つの車種、
シボレー、オークランド(のちのポンティアック)、オールズモデルを、
名前を除いてすべて改造するという形でリプレースメントが行われた。
それらの車種は、すでに顧客から受け入れられ、販売網をもっていた。
基本的な設計方針もあった。欠落していたのは市場における機能と位置
づけについての明確な考え、適切な価格政策、そしてマネジメントだった。
アメリカの繁華街のデパートにとっては、郊外のショッピングセンターへの
進出がリブレースメントだった。
なぜならば、郊外のショッピングセンターこそ、デパートの基本的な強み、
すなわちそのネームバリューと商品知識を、消費者が買い物をする場所で
生かすための手段だった。
リプレースメントは技術的な困難が大きくてはならない。
それは「この製品、この市場、この活動の何が悪いかがわかった。
何を間違って行ってきたか、何をしていなかったかがわかった」という
認識からもたらされるものでなければならない。
変えるべきものは製品そのものではない。製品が適切でないならばそもそも
時間と労力をかける理由がない。変えるべきは、企業自身が製品をどの
ように見、提供し、利用するかである。
これに対し、イノベーションとは、既存の物から新しい種類の経済を生み
出す未知のものをつくり出すことである。
● replacement
1. 交替,交換
2. 代わりとなる人,(…の)代理,代替のもの≪for≫
この続きは、次回に。