P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-55
銀行は顧客の預金の運用から利益を得る。
しかし預金獲得のためのサービス競争は、顧客が最小限の普通預金で
すむようにさせることによって行われている。
したがって銀行は顧客にサービスすればするほど経営が悪くなる。
銀行は顧客が価値を見出すものとは逆のものから利益をあげているからで
ある。
銀行は、顧客が最小限の預金ですむよう資金管理をサービスする。
しかし銀行にとっては、顧客が多くの現金を預金してくれるほど利益を
あげられる。
したがって銀行では最高の能力と技量の者がこの矛盾の解決に充てられて
いる。銀行のやり手とは、顧客に対し最高の資金管理を行いつつ長期に
わたって多額の預金をするよう説得できる者のことである。
この問題の解決の一つは、顧客にとって価値あるもの、すなわち資金管理に
ついてサービス料をとることである。しかし長い間、銀行関係者はこの
種の提案を一蹴してきた。彼らは、サービスの有料化をもくろむ銀行など
ありえず、またそのような有料化を受け入れる顧客はありえないとして
きた。
このように、最も有望な機会は、事業に内在する弱みに存在する。
しかし、そのような弱みを機会に転ずるにはイノベーションが必要である。
この続きは、次回に。