P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-67
基本的な知識の登場が役に立つようになるには、一○年ないし一五年
かかる。
一九世紀の半ば、マイケル・ファラデーの電気に関する発見が経済に
もたらす影響については、さまざまな予測が行われた。
その多くが外れた。しかし、エネルギー分野におけるこのブレーク
スルーが大きな影響をもたらすことだけは明らかだった。
文化的な変化も、時間をかけて影響をもたらす。このことは、最も微妙
かつ最も伝播力の強い文化的な変化、すなわち意識の変化についていえる。
途上国が急速な経済発展に成功するかどうかはわからない。
成功するのは、ごく少数の国に止まることも大いにありうる。
それら少数の国でさえ困難な時期を迎え、危機にさらされる。
しかし、中南米、アジア、アフリカの人たちが経済発展の可能性に目覚め、
その果実を手にすべく決意していることは、変わりようのない事実である。
そしてこの事実が、よほどの災厄がないかぎり、変わることのない経済
発展への原動力を生み出す。工業化に成功することはないかもしれない。
だが、それらの国は今後とも経済発展を優先させていく。
直面するであろう困難も、かえって工業化の可能性とその必要への意識を
強化するだけである。
● 伝播
伝わり広まること。広く伝わること。「文化が東へ―する」
● 災厄
災い。災難。「―に見舞われる」
この続きは、次回に。