P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-104
企業の経営幹部がこの二○年間、リーダー的な階層となったのも、主と
して彼らの職務たるマネジメントの経営管理的な側面、すなわち企業と
いう人間組織を計画し、構築し、方向づけるという側面を体系として
発展させることができたためである。しかし、彼らの職務の企業家的な
側面、すなわち企業に特有の経済的機能を扱う側面は、いまだ体系と
して発展させられていない。
世界中において、今日、企業の経営幹部は、体系としてのマネジメントの
経営管理的な側面に全面的にコミットしている。
しかしいまや、企業家的な側面にコミットしなければならない。
企業家精神が体系として提示され、資源が体系的に利用されたとき、
教育ある素人たちも、産業社会における経済的機関としての企業が
行おうとしていることを理解し、行なっていることに敬意を払うように
なる。そのとき初めて、社会にとって企業活動が当然の活動とされ、
企業の経営幹部の貢献が世に理解されるようになる。
知識労働者は、自らのためにも、貢献、集中、目的的な企業家精神に
コミットしなければならない。自らの人生と仕事を有意義で満足なもの
にするためにも、そのようなコミットメントが必要である。
今日、ますます多くの知識ある人たちが企業で働くようになっている。
事実、現代の企業こそ、知識と生産的に役立たせることのできる職場の
最大の供給者である。高価な教育投資が行われている知識労働者に
対しては、仕事と成果について高い要求を課して当然である。
しかし、知識労働者のほうも、職務がもたらすべき満足と刺激について
高い要求を課すべきである。
経済的な課題という者は、望むらくは本書が明らかにしてきたように、
目的意識と責任感をもって、そして知識と先見性をもって果たすならば
興奮させられる刺激あるものである。
それは、知的な挑戦、達成の満足、そして混沌に秩序をもたらすことに
よって得られる独特の喜びを与えてくれるものである。
● 先見性
先見性とは先を見通す力の事を指しますから「ああなりそうだな」
「多分あの人はこうだな」と予想できる力が強く、尚且つそれが
当たっている事が多い事を指します。非常に冷静な分析が必要と
なりますよね。
● 混沌
すべてが入りまじって区別がつかないさま。
「―たる政治情勢」「次期会長の人選は―としてきた」
この続きは、次回に。