『成しとげる力』④
○ 強みを活かし、一番になれる場所を見つけよ
「どの分野でトップに立つか」を考えるのも、一番をめざすうえで大切な
ことである。強豪ひしめくジャンルで一番になるのは並大抵の努力では
達成できない。もてる強みを活かし、競争が少ないジャンルを狙うのも
一つの戦略である。
○ 己の実力を知ってこそ、頂に立つことができる
どんなに小さくてもよいから成功体験を重ねること—-それによって
自信がつき、負けん気が培われ、さらに大きな成功につながるものだ。
すると、見える景色がどんどん変わっていく。ただし、自分の実力や
器量というものを正しく評価したうえで取り組んでいくのが鉄則である。
「絶対に山頂に立つぞ」という気概と執念が必要なことはいうまでも
ないが、そのうえで、自分の実力を正しく認識することも大切だ。
この二つが備わって、初めて物事を成しとげることができるのだ。
己の実力や器量を客観視することはなかなかむずかしく、おおむね
二十〜三十パーセントは高く自己評価しているのが通例だ。
実力をはるかに超えた目標にチャレンジして大失敗してしまっては
意味がない。
○ エジソンの時計には、なぜ針がなかったのか
世界レベルの実力を維持するためには、いかに日々の鍛錬が大切かと
いうことだ。このことは、経営にもいえることだ。
五パーセントの利益率を倍の十パーセントにするためには、倍の努力
では足りない。その二乗、すなわち四倍の努力をしないと達成できない。
三倍の十五パーセントにするには、九倍の努力が求められるのだ。
○ 「できない」と思うより先に「できる」と百回となえよ
○ 「すぐやる」習慣が、命運を大きく分ける
日本電産には〝三大精神〟なるものがあるが、そのうちの一つが
「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」である。
これもまた創業時に定め、いまでもそのままに受け継いでいる会社の
〝基本精神〟である。その筆頭に「すぐやる」を挙げたのには、大きな
意味がある。
○ あとから来る急行より、先に出る普通電車に飛び乗れ
一歩でも二歩でも先んじて前に進むことは、成功するための必須条件
である。不足の事態に備えること、自分だけは大丈夫だと思わず、つねに
「まさか」を想定して手を打っておくこと。そのことの大切さを私は
このような話を引き合いに出して説いたのである。
○ 素早く、粘り強くチャンスをつかみ取る
○ 明るい言葉を使えば、明るい未来が見えてくる
全身に蕁麻疹がでて救急車で現地の病院に運ばれたのである。
医師から「ハウ・ア・ユー?」(調子はどうですか?)と尋ねられ、蕁麻疹で
苦しんでいた私は「ノット・ファイン」(よくない)とあえぎながら答えた。
幸いにも治療のおかげですぐに退院できることになったが、そのとき
医師から授けられた言葉が忘れられない。
「ミスター・ナガモリ、聞けばあなたは企業の経営者というではないか。
あなたとはもう二度と会うことはないだろうから、成功の秘訣を教えて
あげよう。経営者であるあなたが弱気なことをいっていたら会社は危ない。
どんなときでも『ファイン!』(調子いいよ)と答えなさい。
そうすれば明るい未来がきっと見えてきますよ」
それからというもの、私はどんなときでも明るく「ファイン!」(調子
いいよ)、「エクセレント!」(最高さ)と答えるように心がけている。
世の中、「だめだ。できない」という否定から物事を考える人がどれ
ほど多いことか。とくに、高学歴のエリート、IQ(知能指数)の高い人に
その傾向が強い。
つねに明るい言葉を使い続ければ、どんな逆境のなかにでも明るい
兆しを見つけることができるものだ。
私はそのようにして、多少時間がかかることはあっても、必ず目標を
達成してきた。
不可能になるのは、自分で不可能だと決めつけるからである。
この続きは、次回に。