『成しとげる力』⑬
○ トップは自ら進んで「御用聞き」となれ
「最近の若い者はなかなか報・連・相に来ない」と嘆く管理職がよく
いる。「報・連・相」、すなわち、仕事の「報」告や「連」絡がない。
むずかしい課題に直面したり、プライベートで悩んでも「相」談にも
来ない、というわけだ。しかし、その原因が自分にあることに気づいて
いない幹部がほとんどである。
「こんなことを聞くと叱られるのではないか」
「偉そうにしていて声をかけにくい」
——報・連・相をためらうのには、それなりの理由があるのだ。
黙って椅子に座って、ひたすら報・連・相を待っていないだろうか。
それでは、いくら待っても部下は近づいてこない。
御用聞きのように、自ら足を運び、こちらから声をかけることが大切だ。
上司を敬遠して近寄ってこないが、胸の内では声かけを待っている部下も
いるのだ。
○ なぜ「羊の集団」が「狼の集団」に勝てるのか
ここに、二つの集団を想定してほしい。
一つは、一匹の狼をリーダーにもつ四十九匹の羊の集団。
もう一つは、一匹の羊が率いる四十九匹の狼の集団だ。
この二つの集団が戦った場合、どちらに軍配が上がるか。
常識で考えれば、四十九匹の狼がいる集団のほうが強いと思われがちだ。
しかし、現実は違う。四十九匹の羊の集団が勝つのである。
つまり、その集団の強さはリーダーによって決まるということだ。
企業も組織も同じである。
なぜ、羊の集団は狼の集団に勝つのだろうか。
それは、おとなしい羊にリーダーの狼が「闘争心」という火をつける
からだ。そのときによって、羊の一団は統率のとれた戦闘集団に変身し、
狼の烏合(うごう)の群れを圧倒することができるのだ。
「ろくな部下がいない」と嘆く上司は、自らの無能を自白している
ようなものだ。ろくでもない人を上手に使うのがリーダーたるゆえん
なのだ。リーダーたる者はつねにチームの命運を握っていることを、
肝に銘じてなければならない。
リーダーの統率力が試される場面はいくつもある。
たとえば、百人のメンバーがいたとする。その中の一人がひじょうに
すぐれているが、全体の和をみだす場合はどうするか。
戦力としては惜しいが、集団からは去ってもらうしかない。
組織にとって大切なのは、「一人の百歩より、百人の一歩」なのだ。
どれだけ技術が進歩しても、一人の天才がすべての製品を作り出す
ことはできない。何人もの技術者がチームを組んで、力を出し合い
ながら日々努力を重ねることで、新しい製品がやっとできあがるので
ある。
営業もしかり。いくら優秀な営業マンだったとしても、一人ですべての
売上をまかなうほどの注文をとることなどできない。
一人ひとりの営業マンが地道に得意先を回った、その積み重ねが会社を
支えているのである。
必要なのは、たくさんの人が力を出し合い、協力するということだ。
全員が一致団結したときに、その組織は勝てる集団になるからだ。
したがって、リーダーの役割とは、多くの人の力をまとめることである。
そして、全員のベクトルを一つの方向に合わせて指揮することこそが、
リーダーの任務なのだ。人の士気を高め、自分ができないことを人が
喜んでやってくれるようにしなければいけない。
すべては指揮者、すなわちリーダーの力量にかかっているのだ。
● 烏合の衆
烏合の衆とは、烏が集まって騒ぐように規律や統制がない集団のこと、
語源は烏とはカラスのことであり、衆とは大勢の人のことである。
個々で好き勝手に行動する習性がある烏が集まっても、全く統一できず
この続きは、次回に。