お問い合せ

『成しとげる力』⑲

○ 大きな課題も「千切り」にすれば必ずできる

 

日本電産の創業以来、その成長を支えてきた〝三大経営手法〟のなかに

「千切り経営」というものがある。

どんな困難な問題や大きな課題に直面しようとも、千に切り刻むように

小さくして課題を抽出し、一つひとつ根気よく考えれば、必ず解決法が

見つかる。解決できない問題はない、という意味である。

たとえば、重機でも運べないような大きな荷物を工場に移動させるには

どうしたらいいか。あまりの巨大さに途方に暮れる必要はない。

どんなに大きなものでも小さく分解すれば手でも運べる。

そして、工場の中で組み立てればよいわけだ。

 

知識を身につける具体的な方法はいろいろある。

たとえば「一日一時間、寝る前に本を読む」、あるいは「セミナーを

受講する」こともその一つだ。

チームのコミュニケーション向上にしてもそうだ。

「毎月一回、メンバーを自宅に招いて食事をふるまう」「毎週一回、

仕事以外のことで面談する」など具体的な行動を打ち出すことがポイ

ントになる。

すなわち、目標達成という大きな課題への道筋をできるだけ小さく

刻んで、一つひとつを確実に成しとげていくのだ。

いきなり「山頂をめざせ」と発破をかけられても登山者は戸惑って

しまう。何合目かを示す道標を頼りに手堅く登っていけば、必ず頂に

到達することができるのだ。

 

○ 会社経営は、家計のやりくりと変わらない

 

経営というのはけっしてむずかしいものではない。家庭の主婦がやって

いるお金のやりくりがしっかりできるなら、会社の経営もできると

思っている。これが、前述した〝三大経営手法〟の一つ、「家計簿

経営」である。

たとえば、給料が三十万円としよう。このうち三万円を貯金に回す。

将来のマイホームの頭金に充てるためだ。残り二十七万円で、食費や

家賃、教育費など一カ月の家計をやりくりする。

けっして多くない給料でも、収入に見合った生活をすれば、三万円の

貯金をしながら家計も健全化できるのだ。

会社でいえば、売上三十万円で利益が三万円、利益率は十パーセントだ。

 

ところが、次の給料日が来る前にお金が足りなくなってしまった。

さて、どうするか。ここからは、三大経営手法のもう一つである「井戸

掘り経営」である。井戸から水を汲み上げるように、改善の「アイテム」

を出していくのだ。

三万円の貯金は夢のマイホームの頭金にするための〝虎の子〟のお金だ。

手をつけたくない。そこで、冷蔵庫にある食品類の在庫一掃の出番だ。

野菜の残りや肉の切れ端、そして冷たいご飯—–これらを材料にして

焼き飯を作る。このように食費を切り詰めて、給料日まで乗り切る。

これらのことがしっかりできれば家計を守っていけるが、会社の場合も、

どんなに規模が大きくなろうと、この基本は変わらない。

 

さて、不景気で残業が減り、給料が三十万円から二十七万円に下がって

しまった。それでも、マイホーム実現のために三万円の貯金は続けたい。

その場合はどうするか。支出を減らすしかない。しかし、子どもの将来を

考えれば教育費には絶対に手をつけてはならない。

そこで、晩酌のビールを二本から一本に減らすか、大瓶を小瓶に変える。

これまで酒屋で買っていたのを、会社の帰りにディスカウントショップで

買うようにすれば、さらに節約になる。

ほかにも方法はある。これまではスーパーで天ぷらのお惣菜を買って

いたのを、材料を買って家庭であげるようにする。

お惣菜の天ぷらは百円だったのが、これだと五十円の材料費で賄える。

コストが二分の一になる。つまり、内製化だ。給料が下がっても三万円の

貯金は続けたので、不景気にもかかわらず利益率は伸びる。

このように、状況に合わせて改善に向けたアイテムを探していくのが、

「井戸掘り経営」である。水(アイテム)は地表からは見えないが、水脈は

至るところに眠っている。掘り続ければ必ず水は出る。水が出るまで

割り続けるのだ。

そして、こうした改善アイテムは井戸水同様、汲み上げ続けると必ず

出続ける。汲み続けることが大切である。

 

ここで注意しなければならないのは、教育費のように削ってはならない

費用があるということだ。安易に手をつければ必ず将来に禍根を残す。

開始やの経営でもそれは同じて、どんなに大変な状況の中でも削っては

いけないものがある。

 

 

この続きは、次回に。

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