「道をひらく」松下幸之助 ㉕
・人間だけが
この世の中、見方によっては、すべて人と人との約束のうえに成り立
っているといってもよい。友人との待ち合わせの時間の約束から、金銭
物品の貸借の約束、さらには社則や国家の法律というものも、おたがいの
生活を秩序だて円滑にするための、一つの大事な約束ごとであると
いってもよい。
約束はおたがいの信用の上に花ひらく。だからこれらの約束を守るか
守らないかは、人間の精神の高まりを示す一つのバロメーターであって、
道義とか道徳というものも、こうしたところにその成果の如何をあら
わしてくる。
自分に都合が悪くなったからといって、平気で約束を破るというのは、
これはまさに動物の世界。人間だけが、おたがいにかわした約束は、
これをキチンと守るという天与の高い精神の働きを持っているので
ある。
もしもこの精神が力弱くなったら、その影響は社会生活のあらゆる面に、
物心ともの大きなマイナスとなってあらわれてくる。単に待ち合わせの
時間をムダにするというようなことだけでは事をすまないであろう。
おたがいに、約束は守りたい。
● 道義
人のふみ行うべき正しい道。道理。「―にもとる行為」「―的責任」
● 如何(いかん)
事の次第。なりゆき。ようす。
「理由の―によっては」「事の成否は君の協力―による」
● 天与
天の与えるもの。天のたまもの。天賦。「―の資源に富む」
この続きは、次回に。