「道をひらく」松下幸之助 ㊿+10
・あぐらをかく
一日の精いっぱいの働きを終えて、わが家の居間にゆったりとあぐらを
かけば、心もくつろぐ、身もくつろぐ。だから、身を動かすのがつい
おっくうになり、家人から、とかく小言の一つも言われやすい。
わが家の居間ならそれもよいけれど、やたらにあちこちであぐらを
かかれたら周囲の人が迷惑する。じゃまである。
ましてや、自分の地位や立場にあぐらをかいて、仕事の本来の使命を
忘れ、自分自身のことにとらわれて、なすべきこともなさぬような
ことがあったとしたらじゃまや迷惑ですまなくなる。与えられた
仕事が進まないだけでなく、周囲の働きを遅らせて、ひいては社会の
発展をも阻害することになる。
人それぞれの地位や役割というものは、それぞれに担当している
仕事を、周囲の人びとと相協力して、よりすみやかに、より高く
進歩させ充実させてゆくことによって、人みなの繁栄に資するために
与えられているのである。そんなところであぐらをかいていて、
いいはずがない。
おたがいに自分の仕事を、自分の役割を、もう一度よくかえり
みたいものである。
この続きは、次回に。