続「道をひらく」松下幸之助 ㊳
● 格の上げ下げ
相撲の世界はずいぶんきびしい。場所ともなれば、勝てば白星負けれ
ば黒星、一日一日勝負がついて、一場所事に格が上がる、そして下がる。
だから、瞬時できまる勝負のために、毎日朝早くから、血のにじみ出る
ようなけいこがつづけられているのである。
芸能人の場合はそれほどでないにしても、それでも人気の消長は苛酷な
までにきびしい。それが半年、一年と、多少の時日があったとしても、
相撲と同じく格が下がる。そして上がる。だから芸能人の芸を磨く努力
は、痛ましいほどの真剣さである。
あれもこれもきびしく苛酷だが、それもつまりは、世間というものが、
十の力は十、五の力は五、実力を実力通りに評価するからである。
十の力を十一だと押しつけてみても、しょせんそれは通用しない。
お互いの仕事についても、格の上げ下げはある。長い時日の間に、
気のつかないうちに、格が上がる、そして下がる。
きびしい世間の評価の前に、お互いに謙虚に油断なく仕事を進めたい。
力を養いたい。
● 消長
● 時日
1. 日数。また、月日 (つきひ) 。「―を費やす」「短―」
2. ひにちと時間。また、いつという期日。「出発の―は未定」
この続きは、次回に。