続「道をひらく」松下幸之助 ㊲
● 三日の手伝い
〝三日の手伝い〟という言葉がある。
たとえ三日間の手伝い仕事であっても、その仕事を生涯やるような
つもりで、刻一刻に精魂をこめる、そんな真剣な心根があったなら、
三日の期間を越え手伝いの範囲を越えて、そこから得るものは、はか
り知れないものがある、というのである。
手伝いだからホドホドに、まして三日間のことだから適当に、という
のがまずは人情であろう。しかし、それでは仕事に身が入らない。
ともすればなげやりになり粗雑になって、手伝う方も空しければ、手伝
われる方もやり切れない。仕事の喜びもなければ、働くことの感激も
ない。自他ともに失うことまことに多しである。
精魂こめて三日の手伝いができる人は、どんな時のどんな小さな仕事
にもうちこめる。
そのこと自体が喜びで、だからそこから生まれるものは、自他ともに
まことに大きい。
手伝いだけでなく、本業すらもなおざりにしがちな昨今、今一度わが
心根に静かな反省を加えてみたい。三日の手伝いの真意をかみしめたい。
● 刻一刻
「運命の時が―(と)迫る」「夕焼けの色が―(と)変化していく」
● 精魂
たましい。精神。「―込めて作り上げる」
● 心根
心の奥底。本当の心。真情。本性。
「―を推し量る」「―は優しい人だ」
この続きは、次回に。