続「道をひらく」松下幸之助 ㊿+23
● 世の中
世の中はなかなか自分の思うようにならないというけれど、見方に
よっては、自分の思うようにならない方がいいのかもしれない。
人間は神さまではないのだから、いつも一番正しい考えを持っている
とは限らないわけで、時には自己に執し、他人に捉われる。
そんな捉われた考えを世の中に押しつてみたところで、それで通る
はずがない。
しかし世の中もなかなか寛大なところがあるから、ある程度までは
受け入れてくれる。それでいい気になって調子に乗る。そのへんで
止めとけばいいものをと思っているうちに案の定ゆきづまる。
ゆきづまってみて、世の中はなかなか自分の思うようにならないと嘆く。
もともと自分の考えが捉われていたのだから、嘆く方が無理である。
もしも自分の思うようになっていたら、取返しのつかないことになって
いたかも知れない。自分だけならいいけれど他人にも大変な迷惑を
かける。世の中はいい先生である。寛大なところはあるが、最後には
正邪をちゃんと弁えている。だから馬鹿にしてはいけない。すじみちの
通ったことはやはり通してくれるのである。なぜ自分の思うように
ならないか、世の中を先生に一度よく考えてみたいものである。
■ 執する
深く心にかける。 とらわれる。 執着する。 しっする。
■ 正邪(せいじゃ)
正しいことと、よこしまなこと。善と悪。「―曲直」
この続きは、次回に。