続「道をひらく」松下幸之助 ㊿+25
● 刻一刻
不安、心配は人間につきものである。神ならばいざ知らず、真剣に考え
れば考えるほど、刻一刻に不安がつきまとう。心配がつきまとう。
これでよいのか。このままでよいのか。是と信じてやったが果たして
どうなるのか。うまくいけばいくで不安になり、つまずけばつまずく
で心配する。あれこれと、とめどもないけれど、とめどもないところ
に人の世の味わいもあると言えよう。
ただここで大事なことは、その不安、心配にいたずらに動揺しない
ことである。たじろがないことである。そして、新たな志をもって、
新たな勇気を、刻一刻に生み出してゆくことである。刻一刻の不安の
なかで、刻一刻に勇気を生み出す。そこに人間の真の力がある。
尊さがある。
この年も、間もなく暮れようとしている。この一年、お互いにいろいろ
な心配があった。不安もあった。動揺もしたし、たじろぎもした。
ともかくも坦々という具合にはまいらなかったようである。
しかし、年の暮れの鐘がなるまで、さらに志を失わず刻一刻の勇気を
ふるいたたせたい。
■ 刻一刻
「運命の時が―(と)迫る」「夕焼けの色が―(と)変化していく」
この続きは、次回に。