お問い合せ

「アメリカはなぜ日本より豊かなのか?」⑥

第4章 春闘では解決できない。金融正常化が必要

 

1. 賃金と物価の好環境は始まっていない

 

□ 2023、24年の名目賃金上昇は、労働需要増加によるものではない

 

□ 2023年春闘の評価

 

□ 実質賃金は下落を続けた

 

□ 重要なのは「ペア」

 

□ 経済全体の賃金を決めるのは春闘ではなく、中小の賃金

 

□ 掛け声だけでは、賃金は上がらない

 

2. 生産性向上を上回る賃上げは、スタグフレーションをもたらす:2024年春闘の評価

 

□ 2023年を上回る高額回答

 

□ 実質賃金下落が今後も続く可能性

 

□ 生産性の伸びを上回る賃上げは危険

 

□ 賃上げが販売価格に転嫁されるのは問題

 

□ 消費者物価に転嫁されて、賃金と物価の悪循環が生じる危険

 

□ スタグフレーションが悪化する危険

 

□ 金融正常化が緊急課題

 

□ 円高に誘導して実質賃金を引き上げよ

 

3. 低金利政策で、企業の生産性が低下

 

□ 低金利による円安で、企業利益が見かけでは増加

 

□ 収益率の低い投資で、企業の生産性が低下した

 

□ 低金利は、日本経済凋落の基本的な原因

 

□ 生産性低下は見えにくいので、金利がある世界への復帰は政治的に難しい

 

□ 日本企業の競争力が低下

 

□ 財政の放漫化をもたらした

 

4. 20年以上の金融緩和政策で日本が衰退

 

□ 2000年頃から継続してきた金融緩和・円安政策

 

□ 低金利と円安によって、日本が衰退した

 

□ 円高と高い金利に適応した経済構造を

 

□ 日本経済の望ましい姿は何か?

 

5. 日本経済は停滞を続ける(その1):スタグフレーション

 

□ 定義どおりのスタグフレーション

 

□ さまざまな指標が経済活動の停滞を示す

 

□ 企業の利益は円安で増大

 

□ 価格転嫁のメカニズムが変化?

 

□ 賃金と物価の悪循環が生じるおそれ

 

6. 日本経済は停滞を続ける(その2):消費支出の落ち込み

 

□ 消費支出がコロナ前の水準に回復しない

 

□ 民需の落ち込みを政府支出でカバー

 

□ 補正予算で巨額の支出増

 

□ 円安による訪日観光客増加は、生産性上昇に寄与しない

 

7. 日本経済正常化のために、金融正常化が必要

 

□ なぜ金融正常化が必要なのか?

 

□ 2024年最大の課題は金融政策正常化

 

□ 世界で最後に、やっと金融正常化

 

□ 金融正常化すれば、異常な円安から脱却できるか

 

□ 物価上昇率が低下する可能性

 

□ 日銀はインフレの拡大防止を目的とすべきだ

 

□ 財政資金の調達は困難になるが、財政規律のためには望ましい

 

□ 本当は、企業の立場からも金融正常化が望ましい

 

□ 近視眼的金融政策から脱却できるか

 

□ 日銀債務超過問題をどう処理するか

 

8. 長期金利が2%を超える、新しい経済の構築

 

□ 2%の物価上昇率なら、長期金利は#%台

 

□ アメリカでは、長期金利がバランスの取れた水準にある

 

□ 日銀はありえない経済を求めて、過剰すぎる金融緩和を行ってきた

 

□ 物価上昇のメカニズムも問題

 

□ 長期金利は2〜3%程度になる必要がある

 

□ 金利がある世界への移行で生じる問題

 

□ 潜在成長率の引き上げが重要な課題

 

◆  第4章 まとめ

 

1. 「賃金と物価の好循環」が日本でも実現しつつあるとの見方が広まっている。

     しかし、2023年以降の高い賃上げ率は、物価上昇によりもたらされたものであり、

      労働に対する需要増の結果ではない。なお、春闘賃上げ率のうち経済全体の賃上げ

      率をもたらすのは「ベア」だけだ。また、春闘参加企業は全企業の一部でしかない

      ことに留意する必要がある。

 

2. 2024年春闘で、高額回答が続いた。しかし、賃金上昇分が販売価格に転嫁されると、

     スタグフレーションを誘発する危険がある。

 

3. 金融緩和で金利が低下し、収益性の低い投資が正当化されることとなった。

     このため、生産性が低下した。また、財政資金の調達コストが低下したため、財政

     放漫化がもたらされる。

 

4. 20年以上にわたる過剰な金融緩和によって、日本経済が衰退した。ここから脱却

    して金融正常化を進めることは、焦眉の課題だ。

 

5. 日本経済はスタグフレーションに落ち込んでいる。賃金上昇分が物価に転嫁される

    という動きが生じているのかもしれない。

 

6. 実質家計消費支出が減少している。これを補うために、財政支出が膨張している。

 

7. 生産性向上による賃金上昇を実現するために、金融政策の正常化が必要だ。

    日銀は、2024年3月に金融正常化の開始を決定した。日本経済が大きく変わることが

    期待される。金融正常化は、財政や企業にとっても、本来は望ましいことだ。

 

8. 実質経済成長率、消費者物価上昇率、長期金利の間には密接な関係があり、この関係を

     無視して金融政策を決めることはできない。日本では、物価上昇率を2%にするとし

    ながら、長期金利を0%に抑えるという矛盾した経済をも求めてきた。物価上昇率が

    2%を超えれば、長期金利は現在より大幅に高くならなければならない。


 

< 参考資料 >

 

□ スタグフレーション

 

通常、景気の停滞は、需要が落ち込むことからデフレ(物価下落)要因となりますが、

原油価格の高騰等、原材料や素材関連の価格上昇等によって不景気の中でも物価が上昇

することがあります。 これが、スタグフレーションです。

 

□ YCC

 

イールドカーブ・コントロール(yield curve control)の英語略称で、長期金利と短期

金利の誘導目標を操作し、イールドカーブを適切な水準に維持すること。

「長短金利操作」とも呼ばれます。

 

□ コストプッシュインフレ

 

原材料費などコストの上昇が原因で発生するインフレのこと。原材料や資源を供給する

企業が価格を引き上げることによって起こるとされています。人手不足で賃金が高騰し

た場合も、コストプッシュインフレの原因となります。 一方、需要拡大などの要因で

インフレが起こることを「ディマンドプルインフレ」と呼びます。

 

□ テイラールール

 

テイラールールとは、物価上昇率が長期的な目標値からどの程度乖離しているか、

及び景気変動に対応する指標(例:GDPギャップ)が均衡値からどの程度乖離して

いるかに応じて、政策金利の変更を行っていく金融政策ルールである。

 

この続きは、次回に。

 

2025年4月22日

株式会社シニアイノベーション

代表取締役 齊藤 弘美

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