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1分間ドラッカー 抜粋&感想⑦

第7章 「創造」の最前線をになう言葉

59  満たされていない欲求は何か。

   企業は「我々の事業は何か」を問う時、「すでにある欲求」ではなく、

   「まだ満たされていない欲求」を問う必要がある—とドラッカーは指摘している。

   「正しいことをやれば、最初は必ず損をする。だが、方向が正しければ、

    最終的には成功する。筋の悪いものはいくら努力してもダメだ」とは、

    HOYA社長だった鈴木哲夫氏の言葉である。

60  まったく新しいものについて、市場調査をすることはできない。

   問題の解決策として、マネジメントの教科書は市場調査を教えるが、

   それは間違った処方箋である—-とドラッカーはいう。

   すでにあるものをよりよくする場合も、どこにもないものをつくって潜在需要を

   掘り起こす場合も、市場調査だけに頼っていてはダメである。

   ソニー創業者・井深大氏の言葉—-

               「積み重ね方式で、これができたからこれにしよう、その次はこれをやろうと

       いうのでは、とうていできっこない」

     コンパック・コンピュータの社長だったエッカード・ファイファーの言葉—

                「最初から目標を高く設定する。そうなるとまったく新しい方式を編み出すことが

      できる」

61  変化は常にノンカスタマーから始まる。

   事業の定義を変革し続けることの予防策は、

     ① 体系的廃棄–3年おきに、すべての製品やサービスを根本的に見直していく。

     ② ノンカスタマー–顧客ではない「ノンカスタマー」について知ることだ。

    たいていの企業にとって、ノンカスタマーの数は、顧客よりも多い。

     にもかかわらず、自社の顧客だけを見つめ、顧客だけを大切にしていたとしたら、

     何が起こるか。かつて、米国の百貨店は小売市場の30%をカバーし、自社の顧客について

     熱心に調査、研究していた。しかし、顧客でない70%に関心を払わなかった。

           そのために急速にシェアを失うことになった—とドラッカーは指摘している。

     顧客志向だけでは十分ではない。顧客の情報をいくら集めても、多数を占めるノンカスタマーに

     ついて知ることはできない。変化は常にノンカスタマーの世界で起こり、それがやがて業界に

     大きな影響を与える。たとえばPOS(販売時点情報管理)を見るだけでは、市場の変化は

    つかめない。外の世界に出て、見て、聞くことが初めて変化の予兆を知覚できる。

62 100の80%は、250の50%よりもはるかに少ない。

    新市場、特に大きな新市場は、供給者が複数あるほうが、早く拡大する。

    シェアの80%を占めることは気持ちがよいだろう。だが、それに安んじて100の80%にとどまり

           続ける危険性がある。それより、ライバルと競い合って市場を拡大することだ。

    250に拡大した市場の50%を占めたほうが、はるかに利益は大きい—とドラッカーはいっている。

    成果を生み続けるためには、マーケティングとイノベーションは欠かせない。だが、独占は

    イノベーションの停滞を招くのだ。ライバルひしめく活気あふれる市場で、企業の思いもよらない

    ようなニーズが次々と生まれる。そのほうが、恩恵は当然大きくなる。

       追求すべきは最大より最適だ。

63  ゴールに達したと考えることは、誰にも許されない。

   イノベーションを行うには継続学習の風土が不可欠だと、ドラッカーはいう。

   「これでいい」と満足するのではなく、「もっといいものを」という向上心と絶えざる学習が

     風土となって、初めて大きな成果を生み続けることができる。

    イノベーションを行う組織では、継続学習の空気を生みだし、それを維持している。

    ゴールに達したと考えることは誰にも許されない。学習が継続すべきプロセスとなっている–

           とドラッカーは指摘している。

     アップル創業者で、ピクサーも創業したスティーブ・ジョブズの言葉—-

                 「ピクサーやアップルでは、腰を下ろして休むことは絶対にすすめられない」

64  イノベーションの成果は、普通の人間が利用できるものでなければならない。

    世の中の大半は普通の人たちである。組み立て方や使い方のいずれについても、

    こりすぎたイノベーションが失敗するのは、普通の人間、さほど頭のよくない人たちが

    使いこなせないからだ—とドラッカーは指摘している。

    イノベーションの成果は、誰もが使えるものでなければならない。さほど頭のよくない人たちが

    使ってくれなければ製品は売れず、企業も大きくなることはできない。

65   「これが本当に望んでいる事業」と胸を張って言うことができなければならない。

   未来において何かを起こすには、勇気や努力、信念が欠かせない。

    ビジョンに対する全人的な献身も必要。

    「これが本当に望んでいる事業だ」と胸を張って言うことができなければならない—

           とドラッカーはいう。

    ビジョンがどれほど優れていても、絶対に成功するという保証はない。

    そこに足を踏み入れるには、才能や資源以上に、勇気、信念、努力、献身が必要だ。

    そして、これこそが、成果をもたらす最高の精神的要素である。

66   利益幅を信奉すれば競争相手に市場を提供することになる。

   圧倒的な力を誇っていた大企業が不振に陥る理由は、

   「利益幅信奉」だと、ドラッカーは指摘している。

   負けてはならない誘惑の一つである。

67  有効な価格政策とは、価格を中心にコストを設定することである。

   価格の決め方には二つある。

      ① コストと利益から決める。

      ② 最初に売れる価格を決め、それで利益を出すためのコストを算出する。

   ①は、つくり手が価格を決める方法だ。それに対し、②は買う側が価格を決めるという

   考え方である。ドラッカーは、企業業績が悪化する大罪の一つとして、コストを中心に価格を

     設定することをあげた上で、こういっている。買う側は、企業の利益を保証する債務など

   負っていない。企業がどれだけコストをかけ、どれほど利益がほしいかなど関係ない。

   自分の経済事情と価格判断がすべてだ。買う側が喜んで払ってくれる価格と、

   ライバルがつける価格、この二つを勘案することが価格政策である。

   つまり、企業は決められた価格の中でいかに安く、いいものをつくるかを考えることが

    大切なのだ。

68  人は優れているほど多くの間違いをおかす。優れているほど新しいことを試みる。

   ドラッカーはいう。あらゆる組織が、ことなかれ主義の誘惑にさらされる。

   挑戦をやめ、無難な目標を掲げ、平穏な日々を送ろうとするが、それでは組織として

    成果があがらない。組織の健全さは、高い基準の要求にある。

    高い基準を求めれば、当然失敗だって考えられる。

    しかし、ドラッカーは「それでよい」といっている。

    必要なのは、新しい挑戦をしない者は叱るが、努力し、挑戦したが失敗した者は

     叱らない姿勢である。挑戦を批判するのではなく、助けるという姿勢だ。

     そうした姿勢が徹底されて初めて「失敗を恐れるな」という言葉が真実味を帯びる

      ことになる。

69  報酬を支払われるのは、判断力に対してであって無謬性に対してではない。

   マネジメントは、自らの過誤を認め受け入れる能力に対しても報酬を払われている–と

   ドラッカーはいっている。

   リーダーに必要なのは間違いや失敗を恐れ、「正しさ」に固執することではなく、

   間違いや失敗をきちんと受け入れた上で「正しい判断」をすることである。

           (イノベーションと企業家精神)

   無謬—理論や判断にまちがいがないこと。「推論の無謬性」

70  成功するには、最初からトップの座を狙わなければならない。

   ドラッカーによると、イノベーションに成功するためには、小さくスタートすることが

       必要だという。あまりに大がかりな構想や、産業革命を起こそうといった計画は

       成功しない。最初は少しの資金と人材で、限定された市場の中で始める。

    戦略を立てるにあたっては、大市場であれ、ニッチ市場であれ、最初からトップを狙うことが

    必要である。そうしなければ、競争相手に機会を与えるだけに終わるという。

    成功を目指すなら、世界一の企業を競争相手に設定し、どんな分野であれトップを目指す。

    でなければ、イノベーションとはなり得ない。

 

この続きは、次回に。

 

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