企業とは何か-⑧
働く者の参画を促す
□ これら戦時生産の経験から得られる結論は、三つである。
第一に、必要とされているものは労使ともに問題解決への積極性と姿勢だと
いうことである。
第二に、まず働きかけを行うべきものが、生産工程、製品、職場コミュニティ
という三つの純粋に技術的な領域だということである。
第三に、われわれはまだ問題そのものを扱えるほどには多くを知らず、
できることは症状に対する措置だけだということである。
単なる働きかけにすぎないとはいえ、なしうることはいくつかある。
そのうち最も早く効果をあげるであろう第一の分野が不良生産の新展開である。
・働く者を参画させる
大量生産の新展開に次いで働きかけを行うべき第二の分野が、働く者と製品との
関係の見直しである。戦時生産に特有の愛国的な熱気とドラマ性に裏打ちされた
製品への愛情に似たものを平時生産においても生み出さなければならない。
・事業への理解を促す
第三の分野が事業全体への理解の促進である。
働く者の側が、マネジメントとは何か、その役割、問題、原理、倫理が何で
あるかを知る最善の方法が、責任をもって主体的に行動する機会をもつこと
である。これを促進することこそ産業社会への最高の寄与である。
・職場コミュニティの仕事
賃金の決定要因
□ 賃金については、客観的な基準は一つしかない。
生産性である。賃金は生産したものから支払われる。
それは製品コストの一部であって、価格の一部である。
したがって、生産性の向上によらない賃上げは欺瞞で
あって、やがて働く者自身に害をなす。
・賃金の定義の違い
市民性を回復させる
・企業を強化するもの
□ 産業社会における機会の平等と市民性の実現こそ企業にとっての
利益だということである。
・社会的組織としての企業
□ 企業が社会の代表的組織であること、人間からなる組織であること、
秩序あるものとしての社会に関わるものであること、われわれの全員が
消費者、労働者、貯蓄者、市民としてその繁栄に利害を有することこそ、
われわれが学ぶべきもっとも重要な教訓である。
□ この企業という新しい社会的組織を効率よく機能させ、その経済的、
社会的な可能性を十分に発揮させ、その直面する経済的、社会的な
問題の数々を解決することこそ、われわれにとって最も緊急を要する
課題であり、かつ最も挑戦の価値のある機会である。
この続きは、次回に。