「新訳」 イノベーションと起業家精神 上 ⑦
・変化が機会
この新しいものを生み出す機会となるものが、変化である。
イノベーションとは、意識的かつ組織的に変化を探すことである。
それらの変化が提供する経済的、社会的イノベーションの機会を体系的に分析することである。
したがって、(起業家精神の基盤ともいうべき)イノベーションの体系とは、具体的、処方的な
体系である。すなわちそれは、変化にかかわる方法論、起業家的な機会を提供してくれる
典型的な 変化を体系的に調べるための方法論である。
・イノベーションのための七つの機会
具体的には、イノベーションの機会は七つある。最初の四つは、企業や社会的機関の組織の
内部、あるいは産業や社会的部門の内部の事象である。したがって、内部にいる人たちには
よく見える ものである。それらは、表面的な事象にすぎない。しかし、すでに起こった変化や、
たやすく起こさせる ことのできる変化の存在を示す事象である。
まず、第一が予期せぬことの生起である。予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ出来事である。
第二がギャップの存在である。現実にあるものと、かくあるべきものとのギャップである。
第三がニーズの存在である。
第四が産業構造の変化である。
残りの三つの機会は、企業や産業の外部における事象である。
すなわち、第五が人口構造の変化である。
第六が認識の変化、すなわち、ものの見方、感じ方、考え方の変化である。
第七が新しい知識の出現である
これら七つのイノベーションの機会は、截然と分かれているわけではなく、互いに重複する。
それは、ちょうど七つの窓に似ている。それぞれの窓から見える景色は隣り合う窓とあまり
違わない。だが部屋の中央から見える七つの景色は異なる。
さして意味のない製品の改善や、価格の変更によって生じた変化を分析することによって、
偉大な化学的発見による新しい知識を華々しく応用するよりも、大きなイノベーションが行われる
ことがある。日常業務における予期せぬ成功や、予期せぬ失敗のような、不測のものについての
平凡で目立たない分析がもたらすイノベーションのほうが、失敗のリスクや不確実性ははるかに
小さい。またそのほとんどは、成否は別として、事業の開始から成果が生まれるまでのリード
タイムがきわめて短い。
この続きは、次回に。