チェンジ・リーダーの条件④
Part 2 マネジメントの課題
1章 マネジメントの役割とは何か
○ 果たすべき三つの役割
組織は、目的ではなく手段である。
問題は、「その組織は何か」ではなく、「その組織は、何をなすべきか。使命は、何か」である。したがって、次に問うべき問題は、「マネジメントの役割は何か」である。
われわれはマネジメントを、その役割によって定義しなければならない。
マネジメントには、自らの組織が社会に貢献するうえで果たすべき役割が三つある。
第一に、組織に特有の使命すなわち目的を果たすことである。
第二に、組織に関わりのある人たちが生産的な仕事を通じて生き生きと働けるようにすることである。
第三に、自らの組織が社会に及ぼす影響を処理するとともに、社会の問題に貢献することである。
○ 組織の使命を果たす
第一に、マネジメントは、その組織が使命を果たすために存在する。
○ 働く人を生かす
第二に、マネジメントは仕事を生産的なものにし、働く人たちを生かす役割がある。
真の経営資源は一つである。人である。
組織が成果をあげるのは、人的資源の生産性をあげることによってである。
現代社会においては、組織こそ人間にとって生計の資を得、社会的な地位をもち、コミュニティの一員となり、自己実現と生きがいを得るための手段である。
○ 社会的責任を果たす
第三に、マネジメントには、自らの組織が社会に及ぼす影響を処理するとともに、社会の抱える問題の解決に貢献するという問題がある。
社会に財とサービスを供給するために存在する。
2章 われわれの事業は何か
○ 利益は、企業と企業活動にとって、目的ではなく制約条件である。
利益は、企業の活動や意思決定にとって、原因や理由や根拠ではなく、その企業の活動の妥当性を判定する基準である。
○ 企業の目的は、一つ一つ顧客の創造
企業とは何かを決めるのは、顧客である。なぜなら、財やサービスを手に入れるために代金を払うという自発的な行動だけが、経済資源を富に、物質を財に変換するからである。
企業の目的が顧客を創造することであるために、企業には基本的な機能が二つある。
それは、マーケティングとイノベーションである。
成果を生むのは、マーケティングとイノベーションだけである。
○ 顧客から出発せよ
これまでマネジメントというマーケティングは、販売に関係する諸々の活動の組織的な遂行を意味していた。だが、それではまだ販売である。その考えは、われわれの製品から出発している。
われわれの市場を探している。これに対し、真のマーケティングは、顧客から出発する。
すなわち、人間、現実、欲求、価値から出発する。
「われわれは何を売りたいか」など考えない。
「顧客は何を買いたいか」を問う。
「これが、われわれの製品やサービスにできることだ」とはいわない。
「これが、顧客が求め、価値ありとし、必要としている満足だ」という。
○ 新しい経済満足を生み出す
しかしマーケティングだけで、企業は成功できない。
企業は、成長する経済にしか存在しない。
少なくとも、変化を当たり前とする経済にしか存在しえない。
そして企業こそ、この成長と変化のための機関である。
したがって、企業の第二の機能は、イノベーションである。
新しい経済的満足を生み出すことである。
イノベーションの結果もたらされるものは、値下げかもしれない。
イノベーションの結果もたらされるものは、新しいよりよい製品や新しい便利さや、新しい欲求である。
生産的なイノベーションとは、単なる改良ではない。
それは、新しい欲求の満足をもたらす製品とサービスの創造である。
イノベーションとは、既存の製品に新しい用途を見つけることでもある。
イノベーションは発明ではない。
技術に関わる概念ではなく、経済に関わる概念である。
社会的なイノベーションや経済的なイノベーションは、技術のイノベーション以上に重要である。
イノベーションとは、人的資源や物的資源に対し、より大きな富を生み出す新しい能力をもたらすことであると定義できる。したがってマネジメントは、社会のニーズを、利益をあげる事業機会としてとらえなければならない。
これこそ、イノベーションの定義である。
このことは、社会、教育、医療、都市、環境などさまざまなニーズが強く意識されている今日にあって、特に強調されるべきである。
企業をマネジメントすることは何か。
企業の活動とは、マーケティングとイノベーションによる顧客の創造である。したがって、企業をマネジメントするということは、起業家的な活動である。
もちろん企業をマネジメントするためには、管理者的な活動も必要である。しかしそれは、起業家的な目標に従うものである。
構造は戦略に従うからである。
この続きは、次回に。