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チェンジ・リーダーの条件⑪

Part3  マネジメントの責任

 

1章     企業の所有者が変わった

○   年金基金の台頭

最大の年金基金たる公務員年金基金が、もはや受け身の投資家に甘んじている。

取締役の任命、経営陣の報酬、定款変更について、拒否権などの権利を行使している。

同じように重要でありながら見過ごされていることとして、年金基金が、アメリカの大企業の中長期債の

約4割を保有するにいたった。つまり、それら機関投資家は、企業国家アメリカの最大の所有者であると同時に、最大の債権者ともなった。

財務の教科書が指摘しているように、債権者の力は、所有者の力に匹敵し、ときにはその力を上回る。したがって年金基金が、支配的な所有者かつ債権者として登場してきたことは、経済史上最大の権力構造の変化を意味する。

実は、この権力構造の変化を正面から認めなかったことが、近年の敵対的買収、LBO、企業再編など、アメリカの金融と資本の乱気流の大きな要因となった。

ここでわれわれは、二つの問題に注意を向けなければならない。

一つは、アメリカの新しい所有者つまり年金基金は、企業のマネジメントに対し、いかなる責任をもたせなければならないかという問題である。

もう一つは、その責任を果たさせるためにはいかなる組織構造を実現しなければならないかという問題である。

 

○   もはや投資家ではない

年金基金しいう受託者、特に公務員を代理する受託者は、自分たちがもはや投資家ではないという事実に目覚めつつある。

定義によれば、投資家とは、株式を売却できる者である。

小さな年金基金であれば、持ち株を売却できる。しかしそれら小さな年金基金の所有分は、年金基金資産全体の4分の1程度にすぎない。

ところが中規模以上の年金基金となると、その持ち株はかなりの規模となり、もはや簡単に売ることはできない。

他の年金基金が買ってくれないかぎり、売れない。

市場に吸収させるには、額が大きすぎる。

機関投資家の間で取引する以外に、処分の道はない。

年金基金は、19世紀の所有者のように、自らが企業のマネジメントとなることはできない。しかも企業は、権限と能力をもつ強力で自立したマネジメントを必要とする。

 

○   成果と仕事に対する責任

責任は、善き意図に対してではなく、仕事と成果に対してもたされなければならない。

責任が決算にとどまらないことは明らかであっても、財務上の責任は含んでいなければならない。

多くの人が、企業の仕事や成果は自明であるという。もちろん明らかでなければならない。仕事と成果を明確に定義することは、効果的なマネジメントと、利益のあがる所有権にとっての前提条件である。

 

この続きは、次回に。

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