チェンジ・リーダーの条件-28
2章 既存の企業がイノベーションに成功する条件
○ 「大企業はイノベーションを生まない」は本当か
大企業はイノベーションを生まないとの通年が生まれた原因は、その前提にある。
イノベーションと起業家精神が、自然の衝動、自然の創造、自然の行動であるとしているところにある。
そして、イノベーションと起業家精神が大組織で生まれないのは、組織がそれを抑えているためであるとする。
しかも、起業家としてイノベーションを行っている既存の企業が少ないことを、決定的な証拠とする。
かなりの数の中堅企業、大企業、巨大企業が、起業家としてイノベーションに成功しているという事実は、イノベーションと起業家精神が、いかなる企業においても実現できることを示している。
ただし、そのためには意識的な努力が必要である。学ぶことが必要である。
起業家的な企業は、起業家精神の発揮を自らの責務とする。
それを鍛える。そのために働くそれを実践する。
○ 起業家精神が生まれる構造
イノベーションを行うためには、そこに働く人間の一人ひとりがいつでも起業家になれる構造が必要である。
起業家精神を中心に、諸々の関係を構築することが必要である。
さらには、報酬、報奨、人事を優れた起業家精神に報いるためのものとし、起業家精神を阻害するものにしてはならない。
起業家的な事業、新しい事業は、まず既存の事業から分離して組織しなければならない。
起業家的な事業を既存の組織に行わせるならば、失敗は目に見えている。一つの理由は、既存の事業は、それに責任をもつ人たちから時間とエネルギーを奪うからである。
○ 新しい事業をおろそかにしない方法
新しい事業をおろそかにして息の根をとめることを防ぐ最善の、唯一といってよい方法は、それらのものを初めから独立した事業としてスタートさせることである。
新しい事業やイノベーションに関わる仕事を独立させて行う理由は、もう一つある。それは、負担を軽くするためである。
○ 起業家マネジメントにおけるタブー
起業家マネジメントを行うためには、してはならないことがいくつかある。
第一に、もっとも重大なタブーは、既存の事業部門と起業家的な部門を一緒にすることである。
第二に、すでに大企業の多くが起業家たちと合弁企業を組んでいるが、成功した例はあまりない。
第三に、いかなる企業であろうと、得意な分野以外でイノベーションを行おうとしても成功することはめったにない。
イノベーションは、多角化であってはならない。
いかなる利点があろうとも、多角化をイノベーションや起業家精神と一緒にしてはならない。
新しいものは、理解していない分野で試みるにはむずかしすぎる。
イノベーションが行えるのは、市場や技術について卓越した能力をもつ分野においてのみである。
イノベーションは、自らが理解しているところでしか行えない。
第四に、買収、すなわちベンチャービジネスを取得することによって、起業家的になろうとしてはならない。
この急激な変化の時代にあって、イノベーションを行い、成功し、繁栄したいのであれば、起業家マネジメントを、自らの組織のなかに構築しなければならない。
組織全体にイノベーションの意欲を醸成し、イノベーションと起業家精神のためのマネジメントを確立しなければならない。
大企業であれ中小企業であれ、起業家として成功するには、起業家的な企業としてマネジメントしなければならない。
この続きは、次回に。