お問い合せ

ドラッカーとの対話  未来を読みきる力 2

ドラッカーの洞察力

 

ドラッカーのこの鋭い洞察力はどこから出てくるのだろう。

歴史に関する知論や前述した多様性の中からであるのはもちろんだが、

もう1つのカギは、その「アナロジー」(analogy)的発想の巧みさにあると言える。

ドラッカーは、創造性とは「既存のものを新しく組み合わせることである」という

趣旨のことをよく言っている。

そして常に古いものの中に新しい見方を探っていこうとする。

こうしたところにドラッカーの創造力のひとつの源泉があるのではなかろうか。

アナロジーを活かしつつ、種々の歴史の流れの中から新しい組み合わせをつくって

新たな創造につなげる。このあたりがドラッカーの洞察力のひとつの有力なヒントになっていると思う。

 

ドラッカーの人間重視

 

ドラッカーはよく「経営学(マネジメント)をインベント(invent)した男」というふうに

紹介され、そのような題の本も出されているが、この「invent」という言葉は

「発明」という意味だけではなく、「発見(作り出す)」という意味も持っている。

その点を考えると確かにそう紹介されても間違いではない。

ドラッカーにはユニークなテープ・レクチャーがある。

アメリカ経営者教会編の古いオーディオ・テープの中の『How To Manage Your Boss』、

すなわち「上役管理法」がそれである。

その一部は著作の中でも紹介されている。

この上役操縦法の第1条は、上役というのは「天使でもなければ悪魔でもない」。

要するに鬼でもなければ仏でもない生身の人間として考えろということである。

そして第2条は、「上役を変えようと努めるな」。

上役、つまり人間はそれほど変わらないものなのだ。

これは後述するように、ドラッカーのリアリスト(現実主義者)としての側面の現れである。

ドラッカーは3番目に、「もし上役が非常にダーティなら、どんなに優秀であったとしても、

即刻その船を捨てろ」と言い切っている。

そういうところにいてはいけない。

自分もやはり濁って腐ってしまう。

最近もあるところで、とにかく資本主義の中で一番問題なのは、

私利私欲に走る人間が多いということで、それはけしからんと

憤っている。

ドラッカーがこれまで主張してきたのはすべて—–

バリュー(価値)、インテグリティ(廉直さ)、キャラクター(性格)、ナレッジ(知識)、

ビジョン、責任、セルフ・コントロール、ソーシャル・インテグレーション(社会統合)、

チームワーク、コミュニティ、コンピテンス(実力)、社会的責任、

クオリティ・オブ・ライフ(人生・生活面での質重視)、

それから自己実現、リーダーシップ、ディグニティ(尊厳)など-

—-いわば資本主義というものの中からキャピタルを取り除くために

奮闘してきたことを証している。つまり、人間主義をもってかなりの部分を

置き換えようとしたのである。

 

この続きは、次回に。

 

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