ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 19
第3部 21世紀を見透すドラッカーの眼
7章 21世紀の企業と経営の本質
□ 経営とは貴重な資源の上手な組み合わせ
経営者とは、「変化する社会(外)の中の一員として、絶えず未来を見つめながら
一定の使命感を持ち、社会の中、そして会社の中(内)にある貴重な資源(ヒト・モノ・カネ・
トキ・シラセ)を上手に(効果的)に組み合わせて、社会(市場=顧客)が欲する製品やサービスを、
知恵を傾けて提供することをなりわいとする者」ということになろう。
そして世の中が、それを是として喜んで受け入れてくれる度合いが利益なのである—-と言うのが、
マルキシズムによる利潤悪者説の呪縛から解き放たれた、ドラッカーの企業経営論の
本質なのである。
□ 組織にとって重要なのは使命感を持つこと
経営者にとって、事業組織にとって(病院とか団体とかの非営利法人の場合は
とくに)重要になるのは、使命感(ミッション)である。
社会の求める(と信ずる)ニーズをしっかり見すえた形で「我々の事業は何か」という
問いかけをすること。それは、とりも直さず「我々の顧客はだれか」という問いを
投げかけることにほかならない。
そしてそこに英知を結集し、資源を効果的に組織化し、絶えざる変化に耐えられるように、
たゆまざる革新(新機軸)を打ち出し、競争上の優位性を生み出すこと。
まさにこれによって、組織の生き残りを図ることこそ、ドラッカーが説いてやまない
〝経営者主体経営学〟の真骨頂なのである。
こうしたドラッカー経営学の底流にいつも脈々と貫流しているのは、変化=変革への
対応という太い地下水脈である。
ドラッカーは、万事を変化の相のもとに論じ、行動することを強く示唆してやまない。
だからこそ、いつも、「10年たったら(今では1年たったら)経営を見直せ、イノベーションの第1歩は
老巧化したものの体系的廃棄から、技術とシステムの革新と新機軸を創造することである」と、
経営者に訴えてやまないのである。
□ 学ぶ組織こそ生き残る
そして最近は、知恵や情報の陳腐化とその加速化に着眼して、学ぶ組織(ラーニング・オーガニ
ゼーション)や自らを鍛え直す組織(セルフ・エデュケイティング・オーガニゼーション)に
ならないかぎり、21世紀に企業体は生き残れないことを厳しく説いている。
しかも、この学びにおいては、まず、古いもの、機能しないもの、生産性向上を妨げるものを
「アンラーン(学びはずし、学び捨てる)」することから手をつけるのが肝心である、
と力説している。そのひとつとして内外に宣伝されているのが、いわゆる〝予期せざる成功、
あるいは予期せざる失敗から学べ〟である。
この続きは、次回に。