ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 32
● ドラッカー名言録その4 「NIIH《お山の大将》根性を捨てよ」
「アメリカの言葉に『NIH』(Not Invented Here)というものがあるが、アメリカで発明、
発見、製造されたものでないものは取り上げるに値しないというこのような高慢な
態度は、間違った修正の1つである。」
変化に対して鋭い感性を磨き、外界の変化を敏感にモニターし、しかも迅速に
対処することをいつも口やかましく説くドラッカーからすると、こうした、お山の大将根性や
鈍感な居直りは腹にすえかねるのであろう。
● ドラッカー名言録その5 「物事は、人が思ったり言ったりする
ことの2倍かかる」
〝物事は当人がこれだけかかると思っている時間の2倍かかる〟
「我々人間は、たいていの場合、自分の能力や自分の重要性を、
過小評価するよりは過大評価しがちである」
「マネージャーは非常に効率的な人ですら、いまだ数多くの不必要な、
そして非生産的な仕事をしている」
そしてドラッカーは、自分がそうだと思い込んでいる主観的な時間の使い方と、
実際に調べてみて判明する客観的な費やし方との間には、非常に大きなギャップが
あることをいつも指摘している。
その昔、リコーの創業者の市村清氏が、「アイデアを生むのは1、
企画にまとめるにはその2倍、実行するには100倍の時間とエネルギーがかかる」と
漏らしていたのを思い出す。
● ドラッカー名言録その6 「知識は消え去りやすい」
1995年に刊行された『変貌する産業社会』(邦訳1996年)において、「経済学者の
〝資本〟の定義に〝知識〟が含まれることはほとんどない。
しかし、今日では知識だけが真の資本なのである」と喝破している。
そして、その知識に関しても、『創造する経営者』の中で、「知識は消え去りやすい
ものである。したがって始終、再確認(リコンファーム)し、学び直し(リラーン)、
習練(プラクティス)し直さなければならない」と本質を衝いている。
さらに同書の別の個所でも、「知識が知識であるためには、進歩しなければならない」と
述べている。
知識そのものが何よりも腐りやすいこと、そのため絶えずリニューアル
すべきことについては、3年前にカリフォルニア州クレアモントのご自宅を
訪れたときにもドラッカーは強調していた。
「知識をラーン(学習)し、リラーン(再学習)し、アンラーン(脱学習)することが、
知識管理の大前提である」と。
とくに最後のアンラーン、すなわち「学び捨てる、学びはずす」という〝(離)脱学習〟の
重要性について、口やかましく説いていたのが印象深く残っている。
ドラッカーはまた、技能を伴わないような知識は非生産的であると断じ、
技能をベースとして知識が活用されてはじめて、知識は生産的なものになると
言い切っている。
しかも、知識と情報とは同義語ではなく、情報が、あることを行うために
実際に用いられてこそ、はじめて知識となるとも言っている。
だから知識とは、情報とは、情報を特定の仕事の達成に応用する能力であるから、
人間、すなわち人間の頭脳や技能によって発言するという重要な指摘を行っている。
この続きは、次回に。