ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 42
18章 ボランティア時代の到来
● ボランティア大国の実態
1995年には全米で9,300万人もの人々、すなわち全人口のほぼ半分に近い人々が
何らかの形でボランティアに参加していて、延べで2,030億時間、一人当たり年間218時間も
奉仕しているとドラッカーも報じている。
一大ボランティア大国に、いったい何が起こっているのか。
第1の問題は、その中身の多くが『レクリエーション・ボランティアリズム』と皮肉られるような、
劇場、博物館、その他の文化施設での活動といった趣味の領域を出ていないこと、
またその延長でしかないところに向けられていることである。
したがって、前述の9,300万人のうち、わずかに8.4%が本当にニーズの高い「人的サービス」、
すなわちホームレス・ヘルプ、ファミリー・カウンセリング、赤十字支援に向けられているだけである。
● 効果的なマネジメントの欠落
第2の問題点は、ボランティア活動や団体のマネジメントがまことに拙劣で、多くの善意や
資源が浪費されていることである。
一時的な災害などの救済に勤労奉仕を惜しまぬ人はゴマンといるが、継続的に面倒を
見なければいけない、問題を抱えた子どもたちや、高齢者介護や貧困世帯の世話、とくに1対1で
長期的に行うべきサービスへのボランティアがきわめて少ないのが大問題なのである。
第3の問題点は、第2のマネジメントの欠落とも密接に関連しているが、
活動の効果性に対する評価や測定が皆無に近いことである。
どのプログラムがうまくいっているのかが皆目わからない。
そのために、せっかく参加したのに、毎年戦線を離脱する人が20%以上もいるのである。
第4は、真に必要な青少年を守る運動をしている人は、銃弾を車にぶち込まれる。
また、危険区域でボランティア活動をしている人は、店が焼打ちにあうといった具合に、
命がけの場合も決して少なくないのである。
● 成功するボランティア活動5カ条
こうした種々の問題点を検討した後で同誌は、最後に「ボランティア地獄」に陥らぬための
5カ条として、ドラッカーの勧める点も含めて次のようなガイドラインを掲げている。
(1) いろいろと探しまわる—-自分に適し、しかもしっかりと運営されている活動を
慎重に選択する。
(2) 自分のスキルとスケジュールを十分認識して、それに合った活動をする。
(3) 十分に準備をしておく—-事前に周到な訓練やオリエンテーションをしてくれるところを選ぶ。
(4) 尊敬が得られるような仕事につき、それを行う。
(5) 自分の参加によって事態が変わってくるような働き方をする。
日本のボランティアリズムはまだ黎明期にあるが、はるかに先を行くアメリカの抱えている
このような問題に、以外に早く日本でも突き当たるのではなかろうか。
この続きは、次回に。