知識ゼロからのイノベーション入門⑱
第12話 大きなチームは組織硬直の始まり。改革は小チームから。
・ 悪いパターンに陥るな
技術系企業には悪いパターンがある。
スタートしてしばらくは技術者が会社をリードしてみんなが情熱を燃やすが、
規模が大きくなると経営や販売のプロが率いるようになり、情熱が薄れてくるケースだ。
ペイジは、技術に疎い経営陣がエンジニアやプログマーの首根っこを押さえてしまうと
指示が的外れになり、現場は幻滅してしまうと指摘している。
大切なのはエンジニアに権限がある企業文化なのだ。
グーグルもエンジニアが100人を超えた頃、悪い管理手法を取り入れたことがある。
100人を10のチームに分け、チームの主任が経営陣に報告を行うパターンだ。
しかし、グーグルには合わなかった。
仕事を面白く創造的に進めたいエンジニアにとって、あまりに官僚的だった。
現場の意見は届かなくなり、組織は硬直化、スピードは鈍化した。
・ 管理職は改革の邪魔になる
才能のあるエンジニアに、想像ではなく管理をやらせるのも馬鹿げていた。
エンジニアとして優秀でも、管理職として優秀であるとは限らないから、二重の損だった。
それ以来、3〜5人の小チームをつくり、エンジニアが主役になって仕事を進めるやり方に変更した。
中間管理職はとことん減らす。多すぎる管理職はイノベーションの邪魔になるからだ。
グーグルは組織をエンジニア主導に変え、福利厚生面で「エンジニアの楽園」を実現して
「大学のキャンパス」「幼稚園の遊び場」と評される自由で明るく、若々しい風土を築き上げている。
第13話 現状維持を望むと、いいアイデアが望めなくなる。
・ 部分的改良は野心の不足
2007年、グーグルでクリック課金広告サービスの「アドワーズ1.0」のアップグレードに
関する会議が開かれた。
2000年の導入から部分的に改良されてきたが、ユーザーからの要望に応えるために
抜本的に改革しようというのだ。だが、担当チームの提案をペイジとブリンは
「野心が足りなすぎる」と一喝した。
ゼロペースでの変革を求めているのに、担当チームはコストやマンパワーなどの理由をあげて、
そこそこの改良にとどめようとしている。
2人は、システムをつぎはぎしてOSを肥大化させていくマイクロソフトのようなやり方が
嫌いだった。「アドワーズはグーグルの収入のすべてじゃないか。
今の仕組みは何かが間違っている。会社が存続しているうちに、それを治す合理的な計画が必要だ。
会社が存続している間というのは、1〜2年だ」と。
・ 改革は否定から始まる
企業が大きくなると抜本的な改革は避けられるようになる。
しかし、現状維持の気持ちが前に出て今をしのぐだけでは、やがて気持ちが前に出て
今をしのぐだけでは、やがて改革ができない体質になり、失速していく。
イノベーションは変化を恐れない気持ち、今あるものを否定する気持ちによってもたらされる。
ペイジは、守りよりも改革を求めることで、常に最高のシステムを求めるグーグル精神を
呼び覚まそうとしたのだ。
担当チームはアドワード2.0を飛び越えて、アドワーズ3.0へと一気に進化する案を
まとめあげることになった。最高のものだけがユーザーを満足させるのだ。
この続きは、次回に。