お問い合せ

「孫子 抜粋」 ⑦

61. 紛紛紜紜闘乱而不可乱也、渾渾沌沌形円而不可敗也
   紛紛紜紜(ふんぷんうんうん)として闘い乱れて、乱すべからず、
   渾渾沌沌(こんこんとんとん)として形円にして、敗るべからず


   雑然といりまじっていて、しかも乱すことはできない。

   始めも終わりもなくつながっていて捉(とら)えどころがなく、破ることができない。

   (整然とした組織は見た目にはよいが、少しでも崩れたらそれきりである。

62. 乱生於治、怯生於勇、弱生於強
      乱は治(ち)に生じ、怯(きょう)は勇に生じ、弱は強に生ず


    大平の中に混乱の種子が潜んでおり、勇気と臆病は紙一重であり、強いものはそれなりの

        弱さを持っている。

63. 善戦者、求之於勢、不責於人
   よく戦う者は、これを勢いに求めて人に責(もと)めず

   戦上手は、一人ひとりの能力よりも、全体の勢いというものを重視する。

64. 択人而任勢
   人を択(えら)んで勢いに任(にん)ぜしむ


    勢いをつくりだすためには、適任者を選んでその機運を醸(かも)しださせることである。

65. 任勢者、其戦人也、如転木石、木石之性、安則静、危則動、方則止、円則行
   勢いに任ずる者、その人を戦わしむるや、木石を転(ころ)がすがごとし、
   木石の性は、安ければ静かに、危うければ動き、方(ほう)なれば止まり、

   円(まる)ければ行く


   戦上手が部下を戦わせるやり方は、木や石を転がすのに似ている。
        木や石というものは、

   置かれた場所が安定していると静止したままであり、不安定だと動き出す。
   その形が角張っているものはじっとしており、丸いものは転がって行く。

66. 先処戦地而待敵者佚、後処戦地而趨戦者労
   先に戦地に処(お)りて敵を待つ者は佚(いつ)し、

   後(おく)れて戦地に処(お)りて戦いに趨(おもむ)く者は労す


   先に戦場へ到着して敵を待ちうけているほうはゆとりがあり、
   後から戦場にかけつけたほうは苦しい戦いに趨(おもむ)く者は労す

67. 善戦者、致人而不致於人
   よく戦う者は、人を致して人に致されず


   戦上手は、どんな場合にも主導権を握っており、相手に引き回されることはない。

68. 敵佚能労之、飽能飢之、安能動之
     敵、佚(いつ)すればよくこれを労し、飽けばよくこれを飢えしめ、安んずればよくこれを動かす


     敵が楽々していたら疲れさせ、満腹していたら飢えさせ、じっとしていたら

         なんとかして動かすがよい。

69. 出其所必趨、趨其所不意、行千里而不労者、行於無人之地也
   その必ず趨(おもむ)くところに出(い)で、その意(おも)わざるところに趨き、
   千里を行きて労(ろう)せざるは、無人の地を行けばなり


    敵がきっとやってくるところで待ち伏せする。そうかと思うと、敵の思いもかけない

        ところに撃って出る。しかも、そのために遠い道のりを行軍しても疲れることがない。

    こんなふうにできるのは、敵のいないところを選んで行くからである。

70. 微乎微乎、至於無形、神乎神乎、至於無声、故能為敵之司命
   微(び)なるかな微なるかな、無形(むけい)に至る、
   神(しん)なるかな神なるかな、無声(むせい)に至る、
   ゆえによく敵の司命(しめい)をなす


  「微」はかすかなこと。微の極限までいって、ついに形そのものがないところまで到達してしまえ。
  「神」は人間の知恵でははかりしれないこと。それはもう言葉では表現できない、無声のものである。
  だからこそ、兵法は、敵の運命すら支配(司命)することができるのだ。

 

 

この続きは、次回に。

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