お問い合せ

「孫子 抜粋」 ⑥

51. 兵法、一曰度、二曰量、三曰数、四曰称、五曰勝
   兵法は、一にいわく度(たく)、二にいわく量、三にいわく数、四にいわく称、

   五にいわく勝


   兵法とは、一は、距離を測ること、二は、物量を測ること、三は、兵士の数を数えること、

   四は、かれらのそれを比較すること、五は、それによって勝算を得ることである。

52. 勝者之戦民也、若決積水於千仭之谿者、形也
   勝者の民を戦わしむるや、積水(せきすい)を千仭(せんじん)の谿(たに)に決するが

   ごとくなるは、形なり


   勝者は、深い谷に満々とたたえた水を落とすような勢いで、人びとを戦わせる。
   体制はそれを可能にするものでなければならない。

53. 治衆如治寡、分数是也
   衆を治むること、寡(か)を治むるがごとくなるは、分数これなり


   多くの人を管理するとき、さながら小人数を管理するように手際よくやるためには、
   人々をいくつかの集団に区分し編成することである。

54. 闘衆如闘寡、形名是也
   衆を闘(たたか)わしむること、寡を闘わしむるがごとくなるは、形名これなり


   多くの人を闘わせるとき、さながら小人数を指揮するように整然と動かすためには、

   合図の旗や鳴り物を使うことである。

55. 凡戦者、以正合、以奇勝
   およそ戦いは、正をもって合(ごう)し、奇をもって勝つ


   戦いというものは、正攻法を原則とし、さらに状況に応じた奇策を用いることによって勝つ

56. 善出奇者、無窮如天地、不竭如江河

   よく奇を出(いだ)す者は、窮まりなきこと天地のごとく、竭(つ)きざること江河のごとし


   変幻自在の戦術はいくらでも出てくる。

   それは天地のように際限がなく、長江(揚子江)や黄河のように尽きることがない。

57. 色不過五、五色之変不可勝観也、味不過五、五味之変不勝嘗也
    色は五に過ぎざるも、五色の変は勝(あ)げて観(み)るべからず。
    味は五に過ぎざるも、五味の変は勝げて嘗(な)むべからず

    色の基本は、黄・赤・青・白・黒の五つしかないが、これを組み合わせると無限に変わった色が

        出せる。また、味の基本は、苦・甘・酸・辛(ひりがらい)・鹹(しおからい)の五つしかないが、
    これを組み合わせると、無限に変わった味を出せる。

58. 戦勢不過奇正、奇正之変不可勝窮也
   戦勢は奇正に過ぎざるも、奇正の変は勝(あ)げて窮(きわ)むべからず


   戦い方は、大別すれば正攻法と奇手との二つがあるだけだが、これを組み合わせることによって、

   無限の戦い方が出てくる。

59. 激水之疾、至於漂石者、勢也
    激水(げきすい)の疾(はや)くして石を漂(ただよ)わすに至るは、勢いなり


    激流は重い岩石を押し流してしまう。これは勢いがあるからである。

60. 鷙鳥之撃至於毀折者節也
    鷙鳥(しちょう)の撃ちて毀折(きせつ)に至るは、節(せつ)なり


    猛禽(もうきん)は獲物に襲いかかり、ひと撃ちで骨を砕き羽根を折ってしまう。

    それは一瞬に力を集中するからである。

 

この続きは、次回に。

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