お問い合せ

「孫子 抜粋」-最終

161.衆樹動者、来也、衆草多障者、疑也、鳥起者伏也、獣駭者、覆也
          衆樹の動くは来たるなり、衆草の障(しょう)多きは疑(ぎ)なり、
          鳥の起(た)つは伏なり、獣の駭(おどろ)くは覆(ふ)なり


          木々が動いているのは敵襲の兆しである。
          草むらに仕掛けがあるのは、こちらに疑いを持たせて、進ませまいとしているのだ。
          鳥が不意に飛び立つのは、伏兵がいる証拠である。
          獣が驚いて走り出すのは、大部隊の伏兵がいるのである。

162.塵高而鋭者、車来也、卑而広者、徒来也、
        散而条達者、樵採也、少而往来者、営軍也


         散じて条達するは、樵採(しょうさい)するなり、少なくして往来するは、軍を営むなり


         土ぼこりが、とがったような形で高く舞い上がるのは、兵車の来襲である。
         土ぼこりが低く広く舞い上がるのは、歩兵部隊が来るのである。
         土ぼこりがあちらこちらに散らばって細く舞い上がるのは、敵兵が薪を取っているのである。
         土ぼこりが、あちこちに移動しながら舞い上がるのは、敵軍が宿営の準備をしているのである。

163.辞卑而益備者、進也、辞強而進駆者、退也、半進半退者、誘也
         辞の卑(ひく)くして備えを益(ま)すは、進まんとするなり、
         辞の強くして進駆するは、退かんとするなり、
         半進半退するは、誘うなり


         相手がへりくだった言葉づかいをしている一方で、着々と準備を進めているのは、

          実は進撃しようとしているのである。強い言葉づかいをし、今にも進撃しそうな気配を

          示しているのは、逆に、退こうとしているのである。

          敵が進んだかと思うと退き、退いたかと思うと進むのは、こちらを誘い出そうとしているのである。

164.鳥集者、虚也
         鳥の集まるは、虚(きょ)なり


         敵陣の上に鳥がたくさん群がっているのは、もう、そこが無人になっているのである。

165.旌旗動者、乱也
         旌旗(せいき)の動くは、乱るるなり


         敵陣の旗がやたらに揺れ動いているのは、内部が乱れている証拠である。

166.吏怒者、倦也
          吏の怒るは、倦みたるなり


          幹部がむやみと部下を怒りちらしているのは、軍が倦み疲れ、戦意を失っている証拠である。

167.諄諄翕翕、徐与人言者、失衆也
          諄諄翕翕(じゅんじゅんきょうきょう)として、徐(おもむろ)に人と言(かた)るは、

          衆を失なうなり


          上司が部下に向かってクドクドと話したり、媚びるような言い方をしたりするのは、

           部下たちの人望を失っている証拠である。

168.数賞者、窘也、数罰者、因也
         しばしば賞するは、窘(くる)しむなり、しばしば罰するは、因(くる)しむなり


         賞状、賞金、賞品などを乱発するのは、指導者が行き詰まっている証拠である。
         やたらと罰を科するのも、指導者が行き詰まっている証拠である。

この続きは、次回に。

トップへ戻る