読めば納得! 認知症予防 脳を守るライフスタイルの秘訣⑧
取り繕い
病識のなさ
自ら受診する例は認知症ではないことが多いが、家族がおかしいと思って連れてくると、
大部分が認知症。
認知症になってしまうと、自らが病気であることを明らかにしようとしなくなるので、
家族が病状に早く気づいて受診を勧めることが大切です。
2. 早期診断のための日常生活チェック
OLDはオランダで臨床医向けに開発されたチェックリストで、本来は診察室で医師が簡便に
認知症を見つけだすためのリストです。
筆者が作成した日常生活チェックリストは、A:記憶、B:見当識、C:注意と実行機能、
D:性格と4領域の変化をみるもので、複数領域にまたがって該当すると認知症が疑われます。
単に記憶が悪いとか、意欲がなくなっただけではなく、いくつかの領域にまたがる症状が出ると、
大脳が広範囲に壊れて認知症になっていると疑われるわけです。
急激に認知機能が低下したとき—-せん妄かな?
夜間に起き出して、訳のわからないことを言い出したり、これから仕事に出かけるといって
服を脱いで着替えようとしたり、おかしな行動が夜間急に生じるようになったら、夜間せん妄の
可能性があります。
せん妄は意識障害の一種で、認知症ではありません。しかし、認知症で脳に病変があると、
些細なきっかけでせん妄になりますので、認知症にせん妄を伴うという、チョット複雑な関係です。
せん妄の特徴は、
① 意識レベルが低下している夜間に生じやすいこと、
② 症状に変動があり、症状が比較的一定している認知症とは異なること、
です。些細なきっかけとは、発熱、脱水、便秘、入院や拘束(ベッドへの縛りつけなど)です。
認知症でなくても、高齢者では老化に伴う病変が脳に出現して認知機能が脆くなっています。
ですから、些細なきっかけ(誘因)でせん妄状態になり、認知症のような症状を示します。
ですから、認知症との見極めが重要です。
せん妄は適切な治療でよくなるからです。
例えば、脱水がせん妄の誘因なら、点滴による水分補給で回復します。また、認知症の場合も、
せん妄を伴うと急に症状が悪化しますので、認知症が悪化したとあきらめないで適切な治療が必要です。
3. 軽度認知障害
認知症には、「独り暮らしが困難なほど認知機能が低下した状態」という定義があります。
認知症になると、金銭や内服薬の管理、一人で旅行に行くなどの日常生活活動(ADL)が困難になります。
よって、記憶が悪くても、生活管理能力が保たれている状態では認知症の定義を満たさず、
認知症とはいえません。
このような正常と認知症の中間の状態を、軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)と
いいます。
2005年の軽度認知障害診断基準
① 認知機能低下の訴えがある。
② 認知機能は年齢相応レベルより低下しているが、まだ認知症ではない。
③ 日常生活機能は基本的に正常。
軽度認知障害を診断するには記憶力の検査をします。そして、記憶力が年相応よりも
低下していると軽度認知障害と診断されます。軽度認知障害で上記の生活管理能力に
破綻が生じ始めた方は、2年間で3割と高率に認知症に進行するという報告があります。
認知症の発症早期に診断をつけるのが早期診断ですが、これからは、発症前に診断を
つけること(発症前診断)が、早期診断の意味合いに使われるようになるでしょう。
軽度認知障害は、記憶障害が強い場合は、アルツハイマー病の前段階である確率が高いです。
しかし、軽度認知障害と診断されても、
① 別のタイプの認知症になる方、
② ずっと軽度認知障害のレベルに留まる方、
③ 正常レベル(年相応)に回復する方、 もいます。
軽度認知障害のすべてが認知症になるわけではありません。
認知症になる危険が高い状態と理解して下さい。
この続きは、次回に。