成功の要諦 -3
第二講 なぜ経営者には哲学が必要なのか(1995年9月13日)
平成7年、「経営哲学塾」(致知出版社主催)における講演です。
著者63歳、京セラは創業36年、第二電電は創業11年を迎え、大企業へと成長していました。
本講演には「人間として正しいことを貫くことが経営者としての第一条件である」「経営者は
才能を私物化してはいけない」という著者の経営哲学が余すところなく説かれています。
経営者は哲学を持たなくてはいけない
私はかねてから、経営者というのは哲学を持つべきだと言っています。
レベルの高い人生観、そういうようなものを持ってほしいとのです。
判断基準となったプリミティブな倫理観
私にあるのは、小さな頃に両親やら周囲の大人たちから「これをやってはいかん。
これはやってもよろしい」と教えられていたプリミティブな倫理観だけでした。
それしか物事の善し悪しを判断する基準がなかったのです。
非常にプリミティブな、両親の教えに準拠して判断するようにしたわけです。
プリミティブ (primitive)とは、「原始的」「素朴な」「幼稚な」という意味。
人間として正しい道を貫く
私は、「原理原則というのは、人間として何が正しいかということです。
私は、全ての判断をそれに準拠して行います」と宣言しました。
企業が儲かるか儲からないかではなく、ましてや自分が損か得かということでもなく、
人間として何が正しいのかを基準にして判断をしていく、またどんな障害があろうと、
その正しいことを貫いていこうと思うと宣言したのです。
「人間として正しいことを貫く」ということが、まずは経営者の条件の一つとなるのです。
経営者の条件として、まず哲学が必要です。
ただし哲学といっても難しいことを言っているわけではありません。
人間として正しいことを基準にして、物事の判断をすべきであるということです。
それは損得勘定でもなければ、戦略戦術論でもありません。
それは人間として正しい道を歩くということです。
それが必要なのです。
倫理観が欠落している会社は発展しない
「こんなに頑張っているのに、なぜうちの会社は大きくならないんだろう」というときには、
会社を律すべき判断基準を、経営者が幹部社員、全社員と共有できていない場合が多い。
判断基準を徹底して社員にまで浸透させていないために、社内に混乱が生じ、発展しないのです。
経営管理システムのない会社は発展しない
管理会計システムを構築しないと、事業が拡大していったときに問題点が見えなくなります。
それが大きな失敗につながるのです。
つまり、大きくなったがために、経営の実態が見えなくなってしまって没落していく
ケースが多々あるのです。
それを防ぐために、私は社員一人ひとりが経営者と同じ意識で仕事に取り組むことができるような
システムをつくり上げたのです。
アメリカ子会社に求めた哲学の共有
国境を超えて通じ合う、あるべき人間の姿
資本主義社会の根底にも倫理観がある
この続きは、次回に。