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池上彰のやさしい経営学 1しくみがわかる ⑥

Chapter2  お金はなぜお金なのか貨幣の誕生

 

 —-次の講義は、ズバリ「お金」です。そもそもお金という概念は、どうやって誕生したのでしょうか?

紙のお札が使われるようになった、その歴史をたどっていきます。

そして、世の中でお金を回すために重要な役割を担う銀行。

その機能や収益のしくみなど、金融について学びます。

 

お金がお金である理由は?

お金というのは、みんながお金だと思っているからお金なんです。

これは論理的におかしいですよね。

論理学でいうとトートロジー(同語反復)と言って、全然説明になっていないことになります。

お金というのは共同幻想なんです。

世界でいちばん通用するのはアメリカのドルですが、それは世界中どこへ行ってもアメリカのドルだな、

いろいろなところで使えるなとみんなが思っていて、ドルで受け取ってもいいという人がたくさん

いるからなんです。

国家がきちんと成立していてお金ですよという保証をしてくれている、だから私たちもそれを

お金だと思っている、そこでお金はお金として通用するということになります。

お金というのは共同幻想。

私たちがお金だと思っているからそれはお金であるという、非常に不思議なものなわけです。

では、どのようにしてただの紙切れをお金として意識し、使うようになったのか。

その歴史を見てみましょう。

 

共同幻想:みんながお金と思っているからお金である。

 

市(いち)の成立とお金の始まり

大昔、私たちは必要なものを物々交換をして手に入れていました。

そこで、物々交換をしたい人たちが広場に集まるようになりました。

みんなで集まれば、物々交換をする相手が見つけやすくなるわけです。

こうして市(いち)が成立しました。

古代日本では稲の栽培技術が中国大陸から伝わり、稲作が始まりました。

稲からお米ができますから、みんなが稲を欲しがります。

そこで、肉や魚を一定量の稲と替えて、その稲をほかのものと替えることができるようにしました。

稲というのは昔は「ネ」と呼ばれていました。

それぞれのものをどれだけの「ネ」に替えることができるかと言っているうちに、これが「値段」の

「値」、「値打ち」の「値」になっていきました。

稲が物々交換の仲立ちに使われていたということが、いまの日本語に残っているんですね。

稲だけではありません。服になる布地もそうです。お札のことを紙幣と言いますよね。

「弊」というのは布のことです。

布も物々交換の媒介として使われていたということが、現在の言葉に残っています。

このように物々交換ではなく、みんなが欲しがるものにとりあえず替えておこうと、それぞれの国で

いろいろなものが使われました。

中国では「子安貝」という大変きれいな貝がお金として使われました。

私たちが現在も使われているお金に関する漢字には、みんな貝という字が入っています。

これでわかりますね。買い物の「買」、貴重品の「貴」、貯金の「貯」、財産の「財」、資本の「資」、

「貧しい」は、貝をどんどん分けていくと貧しくなるということですね。

中国では貝をお金として使っていたということが、現在でも感じに証拠として残っているんですね。

古代ローマでは、兵士の給料として塩が支給されていました。

当時、塩は大変な貴重品でした。その塩でいろいろなものと交換できた。

古代ローマでは塩のことをラテン語で「サラリウム」と呼んでいました。

そしてサラリウムからサラリーという英語の給料という言葉が生まれたんですね。

英語のソルト(塩)とサラリー(給料)は、語源が同じなんですね。

このように、昔何がお金として使われていたかが、現在も言葉にさまざまな形で残っていることが

わかりました。

 

子安貝:大きさが揃っていて強度があったので、古代中国では貨幣として使われていた。

 

金属貨幣の誕生と両替商のしくみ

長く保管できて、あまりたくさんとれるものではないものということで、金、銀、銅が

使われるようになりました。

金貨をたくさん持ち歩かないで済むようにしたいと考える人が出てきます。

そこで登場するのが、「両替商」という人たちです。

まず、金(貨)を両替商に預けます。そうすると、両替商は「預り証」を出してくれます。

もちろん両替商に預り賃(手数料)を払わなければなりませんが、蔵で金を安全に保管してくれます。

そして誰でもその預り証を両替商へ持っていけば、いつでも金と替えてもらえます。

売買をするときに売り主は大量の金貨を受け取る代わりに預り証を受け取れば済みます。

これで心配しながら大量の金貨を持ち歩く必要はなくなるわけです。

次に自分が誰かにお金を払うことになれば、わざわざ預り証を金貨に替えなくても、その預り証を

そのまま支払いに使えばいいことになります。

さらにその預り証を誰かがまた別の売買に使うというかたちで、預り証が次々に世の中で

出回っていくようになります。これが紙幣の始まりです。

当たり前のことですが、最初のうちの紙幣、お札というのは、必ず金と交換できるということが

条件になっていました。

必ず金と交換できるからこそ、お金としての意味があったのです。

 

 

この続きは、次回に。

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