池上彰のやさしい経営学 1しくみがわかる ⑦
両替商から銀行へ
明治に入ると、江戸時代あちこちにあった両替商がやがていくつか集まって、銀行になっていきました。
日本全国にさまざまな銀行ができます。
ところが、やがて悪質な銀行も出てきます。
悪質な銀行が出しているお札を金に替えたいという人がどんどん増える。
そうなると、ずるをして持っている金以上のお札を発行していた銀行は困りますよね。
最初のうちは応じられても、金庫から金はどんどん減り、やがてお札を金に替えることができなく
なります。そういう銀行はやがて潰れてしまいます。こうなると、取り付け騒ぎというのが始まります。
ある特定の銀行にお客が殺到する。それを見ていたほかの銀行のお客も不安になり、あちこちの銀行で
お客が殺到し、いわえる金融不安が広がります。
中央銀行の誕生と金本位制度
これはいけない、やっぱり国全体での信用が必要だから、お札を発行できる銀行し1つだけにしよう、と
いうことでできたのが中央銀行です。
お札を発行することができる、いちばん大事な銀行を中央銀行と言います。
日本は日本銀行、アメリカはFRB=連邦準備銀行、中国は中国人民銀行。
世界各国、それぞれの中央銀行がお札を発行しています。
昔のお金である日本銀行券には、拾圓と書いた券を日本銀行に持っていけば、10円の金貨と交換して
あげますよ、というふうに書いてあります。こういうお金のことを「兌換券」と言います。
このように、金を基にしてお札が発行され、そのお札を持っていけばいつでも金に替えることが
できる制度のことを「金本位制度」と言います。
中央銀行:お札を発行することができる唯一の銀行
兌換券:1885年(明治18年)に初めて発行された。これを銀行へ持っていけば、いつでも金に
替えることができた。
金本位制度の終わり
経済が発展していくうえで、もう金の量に関係なくお札を発行できるようにしようということになり、
やがてお札の発行は金から切り離されます。
金本位制度:金を基にお札が発行される制度
金貨兌換停止に関する緊急勅令:1932年に施行、事実上兌換制度が廃止され、日本の金本位制度は
幕を閉じた。
日本銀行:1882年(明治15年)にヨーロッパの中央銀行をモデルに開業。
日本銀行法によって設立された認可法人であり、国有銀行ではない。
日本政府の信頼があるから、紙幣はお金として使われている。
[補足講義] 貨幣と効果の違い
実はお金には、日本銀行が発行しているものと日本政府が発行しているものの2種類があります。
お札は、日本銀行。硬貨は、日本政府。
このように、お札だけでは足りない部分は政府が発行するということが世界の慣例になっています。
これを「補助貨幣」と言います。あくまで補助として硬貨を発行しているんですね。
金融とはお金を融通すること
銀行の仕事というのはいろいろあるのですが、大きな仕事の一つに、お金が余っているところから
足りないところにお金を融通するということがあります。
これを金融と言います。金融とはお金を融通することなんですね。
金融:お金が余っているところから足りないところに融通すること。
この続きは、次回に。