池上彰のやさしい経営学 1しくみがわかる ⑪
分業は利己心によって成立している
アダム・スミスは言っています。人間だけが分業をすることができる。
人間だけが社会的分業を行い、世の中の経済が回っていると彼は考えました。
いろいろな仕事があり、人はそれぞれ自分のことだけを考えて、その仕事をすれば利益があり
生活ができるからやっているにすぎない。
けれどもこれを社会全体で見ると、世の中の経済が回っていくということです。
つまり、分業は相手への利他心ではなく利己心に働きかけて成立すると言っています。
分業、しかも利己心による分業によって経済は動いていく。
その結果、経済がうまくいくということになります。
社会的分業
実は利己心で経済は回っています。
それぞれの人の利己心によって、分業が行われることで経済は回っていく。
インターネットより抜粋
【利己心】
自分の利害だけをはかって、他人のことを考えない心。「―だけで行動する」
【利他心】
他人の利益を重んじ、他人が利益を得られるようにと振舞おうとする心。
ものの値段も利己心で決まる
値段をどうすればいちばん売れて儲かるかなということを常に考える、これがマーケットという
ものです。そしてここで大事なのが、八百屋さんもスーパーも、お客のためにキャベツの値段を
決めて売っているわけではない、いくらで売ればいちばん儲かるかということを考えて値段を決めていると
いうことです。
見えざる手—-市場の自動調整機能
アダム・スミスには有名な言葉があります。「見えざる手」です。
「生産物が最大の価値を持つように産業を運営するのは自分自身の利得のためなのです。
そうすることによって彼は他の多くの場合と同じく、見えざる手に導かれ、自分では意図して
いなかった一目的を促進することになる」
自分の利得のことだけを考えてみんな働いている。でもそれは社会的分業になっている。
みんなが自分のことを考えて一生懸命やっていると、結果的に見えざる手に導かれて世の中が
うまくいくのです。
市場=マーケットも個々人が利益を求めて利己的に行動しても、見えざる手によって導かれ、
結果として経済がうまく回っていくということです。
第1回の講義でやりましたね。とうやってものの値段が決まるのか。
それは需要曲線と供給曲線が交わったところで決まるのでしたね。
需要と供給のバランスはおのずと調整される。
これを見えざる手に導かれるごとくうまくいくんだよと表現したのです。
見えざる手: 市場経済には、参加者が勝手気ままに行動しても、効率的な生産や分配を実現させる
自動調節機能があるという考え。
アダム・スミスが唱えた政府の役割:国防・公共施設の整備・司法行政
絶対に必要な政府の3つの役割
アダム・スミスが、これだけ絶対必要だと言っているものが3つあります。
ひとつは国防。国を守るということです。それから司法行政。裁判です。
そしてもう一つが公共事業などの公共施設の整備です。
自由な競争をすることによって、経済が効率化していく。
でも政府としても必ずやらなければいけないことがある。
それ以外のことはなるべく政府が経済活動に口を出さないほうが、結果的にうまくいくという
考え方です。
自由競争による資源の最適配分
自由な市場経済では、競争があります。競争することによって資源の最適配分が図られます。
携帯電話は自由市場によって進化しました。
市場の失敗1—独占
現代の私たちの状況はそんなに簡単なものではないことがわかっています。
アダム・スミスは自由な市場に任せればそれで経済はうまくいくと言いました。
ある程度はその通りです。でも放っておくとマーケットが暴走してしまい、勝手に失敗してしまう
ことが起きるんですね。これを市場の失敗と言います。
その一つが「独占」です。
激しい競争が行われると、経営体力の弱い会社は潰れていきます。
経営体力の非常に強い会社がどんどん勢力を伸ばしていき、吸収合併をして大きくなっていく。
ふと気がつくと、ある市場が一つの企業の独占状態になっていることがあります。
これは決していいことではありません。
本来自由放任で市場で自由にやっていれば結局うまくいくはずが、独占企業ができてしまうと市場が失敗してしまうのです。
市場の失敗:市場が競争力であっても、効率的な資源配分が達成できないこと。
独占:市場において売り手や買い手が1社しかいない状態のこと。
この続きは、次回に。