社内プレゼン資料作成術 ⑮
Lesson 29 決裁者の特徴に合わせてスライドをアレンジする
✔️ ハーマンモデルで「決裁者」を見極める
プレゼン資料の仕上げの段階で、もうひとつ大切なことがあります。
それは、改めて「決裁者がどんな人物か?」を確認することです。
数字に強くて論理的な人物なのか? 新しいものが好きで感覚的に物事をとらえる傾向がある人物なのか?
それによって、資料の「見せ方」が異なってくるからです。
そこで、仕上げの段階で、決裁者の特性に合わせて、もう一度スライドをチェックするのです。
たとえば、数字に強い決裁者であれば、アペンディックスに入れた詳細グラフを本編スライドで見せる。
完成を重視する決裁者であれば、よりインパクトのあるキーメッセージを再考する。
このように、決裁者に合わせてマイナー・チェンジをするわけです。
ここで参考になるのが、ハーマンモデルです。
ハーマンモデルとは、大脳生理額の研究成果をもとにGEの能力開発センター所長であった
ネッド・ハーマンが開発した「人間の思考行動特性のモデル」のこと。
人間には「利き腕」や「利き目」があるように「利き脳」があり、【図29-1】のように「倫理型」
「堅実型」「独創型」「感覚型」の4つの思考行動特性に大きく分類できるという考え方です。
✔️ 決裁者4タイプ「傾向」と「対策」
4つのタイプごとに、「決裁者の特性」「その傾向の強い部署」「スライドのチェックポイント」を
ご紹介します。ぜひ、参考にしながらスライドをブラッシュアップしてください。
図29-1 ハーマンモデルの4つのタイプ
※ 省略致しますので、購読の上、お願い致します。
①「論理型」の決裁者
経営企画、管理会計、マーケティング、技術、システムなどの部門でキャリアを積んできた
決裁者に多いのが「論理型」。
彼らは、「ツメに甘さはあるが、面白そうな提案だ」などとGOサインを出すことはありません。
ロジックを完璧に納得できなければ認めてくれません。だから、プレゼンのロジックが首尾一貫
しているか、説得力があるか再度、入念にチェックするようにしてください。
アペンディックスに「抜け漏れ」がないかも重要です。
また、彼らは、データなどの客観的な事実を重視しますから、数字の間違いは絶対にアウト。
それだけで、突き返されるでしょう。
だから、数字のチェックは念には念を入れて行うようにしてください。
②「堅実型」の決裁者
「堅実型」は、カスタマーサービスやコールセンターなどの顧客対応部門、技術・システム部門の
経験者に多いタイプです。彼らは、計画性や実現可能性、プロセスを重視する傾向があります。
そのため、提案自体はロジカルで説得力があっても、現場のオペレーションやスケジュールに
現実性があることに納得できなければ、なかなかGOサインを出しません。
特に、前例のない斬新な提案の場合、「堅実型」は極めて慎重な判断をする傾向があります。
そのため、実現可能性の高さをアビールするアペンディックスをしっかりと用意することを
おすすめします。また、「堅実型」はプロセスを重視しますから、プレゼンそのものも
「今、何の話をしているのか?」をわかりやすくしておく方がいいでしょう。
そのため、スライドとスライドの間に、「次のトピックはこれです」ということを明示する
「ブリッジ・スライド」を丁寧に入れることをおすすめします。
③「独創型」の決裁者
「独創型」が多いのは、広告、デザイン、営業などのキャリアを持つ決裁者。
彼らは、イノベーティブな新しい提案を好む傾向があるので、それに該当する提案であれば
「業界初」「社内初」など、「初」を強調すると効果的です。
もちろん、「初」であることを示すアペンディックスを用意することを忘れないでください。
また、ロジックを軽視することはありませんが、それ以上にビジョンやストーリーを重視する
傾向があります。そのため、データは必要最小限にとどめて、提案する事業を込めた「想い」、
その提案を実施した結果として生み出される「価値」などを、ビジュアルを使って表現する
スライドを用意すると効果的なケースもあります。彼らには、物事の把握の仕方にも特徴があります。
細部を積み重ねて全体を理解するのではなく、まず最初に「要するにどういうことか?」と全体を
大づかみにしたいという欲求が強いのです。
そのため、プレゼンのスライドも、その特性を意識してアレンジすることをおすすめします。
④「感覚型」の決裁者
営業経験者に多いのが「感覚型」です。
彼らは、人間関係や他部署との関係を重んじる傾向があります。
そのため、提案内容の是非はもちろん重要ですが、それとともに、「きちんと関係部署の了解が
得られているか」「根回しができているか」「反対者がいないか」を気にかけています。
この場合、スライドのアレンジを検討するよりも、「他部署とのコンセンサスがきちんと取れている」
ことを口頭で強調すればいいでしょう。
あるいは、「上層部から太鼓判を押されている」ことをさりげなく伝えるのも効果的です。
そのためにも、企画の段階、プレゼン資料作成の段階など、折に触れて関係部署のキーマンや
上層部とコミュニケーションをとっておくことが重要なのです。
ここまで、4つのハーマンモデルについてご説明してきました。
大企業の社内プレゼンは通常、課長、部長、役員、経営者と、ステップごとに異なる決裁者を
相手にプレゼンします。課長は「感覚型」で、部長は「独創型」、役員は「論理型」とハーマンモデルは
異なりますから、その都度、スライドを加えていくようにしてください。
Lesson 30 「1分バージョン」も用意しておく
✔️ 1分バージョンは「解決策」→「効果」→「原因」
ブレゼン資料は5〜9枚でまとめ、3〜5分で終わらせるのが基本。
必ず、「1分バージョン」も用意するようにしてください。
「時間がないから手短に」と指示されたときに対応できるように準備しておくべきなのです。
では、どうすれば1分に縮められる?
プレゼンのストーリーをひっくり返すのです。
どういうことか?
そこで、【図30-1】の「1分ストーリー」に並び替えます。
まず最初に「解決策」と「効果を含む概要」を提示。
そして、その提案の根拠となる「原因」を説明するのです。
つまり、ストーリーをひっくり返して「解決策」の提案から始めて、その根拠と実施計画だけを
示すわけです。これならば、1分で話し終えることは可能です。
図30-1 「3〜5分バージョン」のストーリーと「1分バージョン」のストーリー
3〜5分のストーリー
課題→原因→解決策→効果
1分のストーリー
解決策→効果→原因
※ 省略致しますので、購読の上、お願い致します。
✔️「現状報告」をミニマムにする
図30-2 1分バージョンのイメージ
※ 省略致しますので、購読の上、お願い致します。
この続きは、次回に。