ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学 ㉚
✔️ 日本企業のダイバーシティーはどうあるべきか
実際、今の日本企業の課題は「タスク型の多様性」と「デモグラフィー型」がオーバーラップする
ことでしょう。
ではどうすれば、女性・外国人を登用しながらも「デモグラフィー型の多様性」のマイナス効果を
減らすことができるのでしょうか。
ここでは、経営学で研究されている二つの可能性を紹介しましょう。
第一に、「デモグラフィー型の多様性」のマイナス効果は時間の経過とともに薄れていく可能性が、
複数の研究で確認されています。
時を経てメンバー間のコミュニケーションが進めばその軋轢が消えていく、ということです。
しかし、他方で「このような軋轢は時が経過しても消えない」という研究結果もあり、結論は出て
いません。
第二に、それよりも私が注目しているのは、経営学で近年注目されている「フオルトライン(=組織の
断層)理論」です。
✔️ フォルトライン理論の重要な示唆
フォルトライン理論は、1998年に加ブレティッシュ・コロンビア大学のドラ・ロウと米ノースウエスト
大学のキース・マニンガンが「アカデミー・オブ・マネジメント・レビュー」誌に提唱して以来、
研究が進んできています。
この理論では、人のダイバーシティーにも複数の「次元」がある点に注目します。
※ 省略致しますので、購読にてお願い致します。
実際、その後の複数の実証研究で、この「デモグラフィーが多次元にわたって多様であれば、組織内の
軋轢はむしろ減り、組織パフォーマンスは高まる」という命題を支持する結果が得られています。
この考え方を応用するなら、これまで「男性×日本人」中心であった日本企業に、例えば「女性×30代×
日本人」だけを何人加えても、それはフオルトラインを高めるだけの結果になってしまいます。
しかし、もしここに、さらに「女性×50代×日本人」や「男性×アジア人」、あるいは「女性×40代×
欧米人」など、色々なデモグラフィーの「次元」の人々を加えて行けば、結果として組織内でのフオルト
ラインは減っていくことが予想できます。
✔️ 複数次元のダイバーシティー実現を
私は、この視点は日本企業のダイバーシティー経営に大切な示唆を与えている、と考えています。
すなわち、女性や外国人の登用など「デモグラフィー型の人材多様性」を進めるならば、中途半端に
やるのではなく、徹底的に複数次元でダイバーシティーを進めるべきだ、ということです。
逆に、昨今のブームに乗っただけの「中途半端なダイバーシティー経営」は一番よろしくない、という
ことになります。
一定割合の女性を登用して終わりにするのではなく、そこに「多様な年代の方々を織り交ぜたり、
あるいは(男女問わず)外国人も同時に登用したりすることで組織のフオルトラインを減らすことが、
真にダイバーシティー経営の成果を得ることにつながる」と私は予想するのですが、みなさんは
どのようなお考えでしょうか。
この続きは、次回に。