ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学 ㊾
Part10 やはり不毛な経営学
第22章 「もうかる理由って結局なに?」を突き詰める学者たち
前章まで、世界の経営学の様々な知見を紹介し、時には日本企業への示唆も探ってきました。
ここまでを通じてみなさんの「思考の軸」になり得る知見が少しでも見つかったのであれば、幸いです。
しかし第2章で強調したように、世界の経営学者は、何も「役に立つ」知見を提供することを主眼に、
経営学を研究しているとは限りません。むしろ彼らのドライビングフォースは「ビジネス・企業・組織
メカニズムの真理を知りたい」という、知的好奇心にあります。
逆に言えば本書も、前章まではあえて「ビジネスパーソンの思考の軸になるかもしれない」と思われる
トピックを、私の独断で選んできたと言えます。
しかしその背景には、経営学者の「知的好奇心」をドライビングフォースにした膨大な研究と、知の
蓄積があるのです。
その中には、みなさんから見れば「こんな不毛なことをやってどうなるんだ!」と思われるような研究も
多くあるはずなのです。本章と次章では、みなさんには一見「不毛」かもしれない、しかし世界の経営
学者が真剣に意見を戦わせているテーマを紹介していきます。
さて、本書を通じて強調しているように、世界の経営学者は「科学」を目指しています。
すなわち、真理の探究です。
そして「科学」と名のつく学問では、理論から導かれた仮説が、広くあてはまる真理法則なのか
どうかを検証するために、観測・実験・フィールドワーク・統計分析などを通じて、地道な「実証
研究」を続けていきます。そしてこれこそが、経営学者が日々取り組んでいる活動でもあります。
中でも、これまで経営学者が地道な実証研究を通じて最も意見を戦わせてきたテーマは、「結局の
ところ、会社がもうかる要因って何?」ていう、実に根本的な疑問なのです。
✔️ 重要なのは、産業か、企業そのものか
企業の「もうかる・もうからない」を決める要因って、結局は何なのでしょうか。まず、産業による
違いは大きいかもしれません。例えば米国では、製薬業は全体的に収益率が高いといわれています。
他方、航空業界は過当競争と言える状態にあり、多くの企業が厳しい経営を強いられています。
とはいえ、同じ産業でも会社ごとに業績は違います。
では、おしなべてみると企業の収益率を決めるのは、「どの業界にいるのか(=産業効果)」なのでしょうか、
それとも「企業ごとの特性・戦略(=企業効果)」なのでしょうか。
この問いに答えるため、世界の経営学では、企業収益性の要因を地道に「測定」する実証分析が積み
重ねられてきました。
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シュマレンジーが1975年の米企業1775社の総資産利益率(ROA)データを基に、COV手法を使って得た
結果は驚くものでした。彼の分析では利益率のバラツキの約20%だけを説明できたのですが、その
20%のほぼ全てが「企業がどの産業にいるか(=産業効果)で規定される」という結果になったのです。
✔️ 経営戦略には意味がない?
この結果に衝撃を受けたのは、経済学者より、むしろ経営学者だったといえるでしょう。
考えみてください。この結果が本当なら、「もうかるかどうかは『企業がどの業界いるか』でほぼ
決まってしまう」ということになります。
そもそも企業独自の特性とか戦略とか、そういったことは意味がないと言っているようなものです。
この、経営学の存在意義を否定したようにすら見える結果が確かなのか、さらに検証することが経営
学者に求められました。より大規模なデータや分析手法の改良を通じて、この測定結果を「追試」する
ことが盛んになったのです。
そしてその索引者こそが、あの米ハーバード大学のマイケル・ポーター、そして米カリフォルニア大学
ロサンゼルス校(UCLA)のリチャード・ルメルトだったのです。
✔️ ルメルトの追試
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✔️ ポーターの再追試
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ポーターが中心となって1980年代に確率したSCP理論では、「企業の競争優位には二重のポジショ
ニングが重要である」とされます。
第一に「収益性の高い産業を選ぶべき」というポジショニングであり、第二に「その残業内で、自社が
他社と比べてユニークなポジショニング(競争戦略)を取るべき」というものです。
SCP理論はこのように「産業も、戦略も重要」と主張しているわけで、まさにポーターが自ら得た
「産業効果が4割、企業効果が6割」という測定結果 と整合性です。
皆さんも、この結果には肌感覚として納得いくかもしれません。
✔️ 見過ごされていた次元
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✔️ 日本企業の「もうかる要因」についての研究
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✔️ 地道な実証こそ、経営学者の本来の役割である
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この続きは、次回に。