人を動かす経営 松下幸之助 ②
序章 人を育て活かすために
✔️ いまこそ“人”が大事
今日、経営がむずかしくなっている。もちろん、企業の経営にとっては、容易な時期などあり
得ないであろう。けれども、最近はとくにむずかしくなっているような気がするのである。
※ 省略致しますので、購読にてお願い致します。
こういう時代にあっては、企業の経営者はもちろん、企業に働き多くの人びとも、日夜、経営の
前途に不安を抱きつつ、当面の状況をどう乗り切っていくかに腐心しているというのが実情で
あろう。まことに、企業経営はかつてないような困難な状況を迎えつつある。
しかしながら、むずかしいむずかしいとばかり考えていたのでは、道はひらけない。
むずかしい中にも道はある。
一般的に行って、どのような困難であろうと、それを打開して進む道は必ずあるものだと思う。
問題は、その道をどうやって見出すか、ということである。
企業経営の場合、困難を打開し、新たな発展を求めていくための道はどこにあるか、大事な点は
いろいろある。
製造面、技術面、販売とか資金の面、それぞれに大切である。
しかし、それらの中心をなすものは何かというと、それはやはり“人”である。
なんといっても、人である。物があるとかないとかいうことも、それはそれで大切である。
しかし、物がいくらあっても、それを十分に活かせるかどうか、すべて人しだいである。
人しだいでどうにでもなる。
いくらたくさん物があっても、それを活かせない人ばかりがいたのでは、その物はなきに等しいし、
むしろ場合によっては、そのことがマイナスになりかねない。これは自明の理である。
技術もしかり、金もしかり、すべて、人が中心だといえよう。
それだけに、企業にとっては、人材の育成ということが大切になってくる。
“企業は人なり”ということがよくいわれるが、まさに、人を育て、その人を十分に活かしていくことが、
企業経営の第一の要諦といえるのではなかろうか。
しかしながら、人を育てる、人材育成といっても、これはなかなか容易なことではない。
一朝一夕にできるものではない。
どこの企業もそのことをのぞみ、いろいろと努力を傾けていることと思うが、実際には必ずしも
十分な成果を上げていない姿も少なくないのではないかと思う。
私の場合も、これまでの60余年の経営の過程で、この、人を育てるということについて、私なりの
努力を傾けてきたが、どうすれば企業においてのぞましい人材が育っていくのかということに
ついては、次のように考えている。
この続きは、次回に。