人を動かす経営 松下幸之助 ③
✔️ 企業経営の使命を明確に
まず、前提になるのは、人間それ自体に対する考え方である。
人間そのものをどう考えているか。これが、基本的に大事な点だと思う。
私は、お互い人間はあたかもダイヤモンドの原石のごときものだと考えている。
つまり、ダイヤモンドの原石は磨くことによって光を放つ。しかもそれは、磨き方いかん、カットの
仕方いかんで、さまざまに異なる燦然とした輝きを放つのである。
それと同じように、人間はだれもが、磨けばそれぞれに光る、さまざまな素晴らしい素質をもっている。
だから、人を育て、活かすにあたっても、まずそういう人間の本質というものをよく認識して、それ
ぞれの人がもっているすぐれた素質が生きるような配慮をしていく。
それがやはり、基本ではないか。もしそういう認識がなければ、いくらよき人材がそこにあっても、
その人を人材として活かすことはむずかしいと思う。
それでは、お互い人間だれもがもっているそのような優れた素質を、仕事の場で磨き、十分に活かして
いくためには、まず、何よりも仕事上の知識、技能を取得させ、向上させるといったことが必要なのは
いうまでもない。
そうしたものがおろそかになっては、仕事をスムーズに進めていくこと自体がむずかしい。
だから、日々の仕事の中で、そういう面の向上をはかっていくことは当然なされなければならないが、
私は、それ以前に、もっと大切なことがあると思う。それはどういうことかというと、経営者なり
その企業に、なんのためにその企業経営をするのか、その企業経営の使命は何かということが、十分
明確になっているかということである。
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すなわち、なんのために企業経営をするのか、その企業経営の使命というものが、ハッキリしている、
そしてそれが企業で働く人びと全てに把握されている、これがなによりも大事だと思う。
それぞれの人がそういうものをハッキリとつかんだならば、その使命達成のためにふさわしい経営の
あり方というものが、おのずと明らかになってくるであろう。
一人ひとりがそういった点について理解できるようになってくると思う。
したがって、その使命を達成していくためには、こうしたらよい、ああいうようにすればよいと、
日に新たな工夫を凝らして、よりよき道を切りひらいていくことにもなるであろう。
すなわち、適切にして妥当なアイデアのもとに、向上発展の道をみずから生み出し、歩んでいくことが
できるわけである。そういうことのできる人、そういうことを十分理解した人が育っていくことこそ、
まさにダイヤモンドが磨かれるというか、よき人材の育成ということにつながると思うのである。
そして、そういう人材育成の姿を生み出すためには、まず何よりも経営者自体が人間のそのような
本質をハッキリ認識するとともに、経営者としての使命感に徹することである。
そして、その事業経営の使命を企業に携わる人びとに、絶えずくり返し力強く訴えていくことである。
それが人を育て活かす基本といえるのではないかと思う。
この続きは、次回に。