IoTビジネス入門 ⑯
■ 自動運転カーの普及で思わぬところから転換を迫られる産業
また、自動運転カーの普及によって、幾つかの産業が転換を迫られます。
現在の自動車産業に依存している企業、特にエンジン関連メーカーは、最初に転換を図るか、マニア
向けにその技術を研ぎ澄ましていく必要が出てきます。
また、そもそもクルマ自体がインターネットに接続するので、カーナビ機能などもGoogle Mapの
ようなサービスに置き換える可能性が高いです。
こうした対応が必須の企業は、ある意味、今から備えることができます。
しかし、一見するとクルマと関係ない業界でも、大きな影響を受けることがあります。
例えば不動産企業も、見直しを余儀なくされる可能性のある業界のひとつです。
なぜかというと、自動運転カーとパーソナルモビリティの発展は「移動」のわずらわしさを解消する
可能性が高いからです。
これまで「都心まで何分の駅に住んでいるか」「駅から何分のところに住んでいるか」ということが
不動産業界にとって、ヒトが通勤や帰宅ラッシュなどの移動のつらさから解放されることで、どこに
住むか、という選択肢は一気に広がることでしょう。
海の近くがよい、山の近くがよい、といった、より嗜好にあわせたエリアに住むことができるように
なるはずです。
■ 自動運転カーの家庭は、法律よりも国民感情
ドライバーがハンドルを握らない自動運転カーが走る未来—–。
賛成派と反対派がいるようですが、みなさんはどうでしょう。
賛成派はとにかく自動で走るというのが嬉しい、移動が楽しくなる、楽になる、と主張し、反対派は、
クルマが誤作動したらどうするのだ、危ない、ぶつけた時に誰が責任をとるのかが不明だ、と言います。
自動運転カーの研究や実証実験は世界中で行われているのですが、道徳問題や法律の在り方など、
考え方は国民性に依存します。
ということは、先端技術を早くに享受できる国と、享受できない国が出てくるのです。
例えば、国産自動車メーカーが今後世界における技術的アドバンテージを確保したいと考えた場合、
果たして日本で実証実験をするでしょうか。
チャレンジを悪い方向で捉えがちな日本においては、いくら自動運転カーを走らせられる特区をつくった
としても、最先端のクルマを利用できる可能性は低いでしょう。
これが何を意味するかというと、世の中、特に技術は、みなさんがどういう考えかにかかわらず、
どんどん変化していきます。
自動運転カーはもはや進化というより、イノベーションという次元で生活を変えるわけなのですが、
そういう社会を忌み嫌うほど、経験をするタイミングが遅れるのです。
特に人口知能の分野は深刻です。
人工知能に学習させるデータは実用化の中から生まれるので、実用化が遅れれば遅れるほどクルマに
関する人口知能は育ちにくくなります。
さらに、ここまで述べてきた通り、実用化の遅れによって、自動運転カーの分野だけでなく、周辺
サービスも育たなくなる影響が考えらます。
すると、クルマがインターネットにつながる世界における日本の産業は全体的に遅れ、インターネットの
時に起きたように、あなたのつくるサービスが世界を圧巻する機会を奪うことになりかねないのです。
確かに、自動運転カーについては、ヒトが飛び出してきたときにセンシング仕切れず、不幸にもヒトを
はねてしまった場合の責任はどうするか、といったことをはじめとする様々な問題があります。
しかし、これらの問題について感情的になったところで、ヒトが運転しているときと同じく、保険制度や
法制度の整備を進めることでこの問題を回避するほか手段はないのです。
そもそもヒト以上の精度でセンシングされているクルマがはねるような飛び出しは、ヒトが運転して
いても防げないのですから。
この続きは、次回に。