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私の日課-其の3

✔️ 風林火山陰雷の如し—経営兵法解釈

 

いきなり遠回りを近道に変えよう(迂直の計)としても、そう簡単にはいかない。

事前に準備しておく、備えておく、よくよく考えておく、ということが必要だ。

たとえば、企業経営においても、戦略実現のためのショートカットとして、他社とアライアンスを組み、

ネットワーク化によって事業を進めて行こうとすれば、そもそも、それぞれの企業がどういう利害と

意図を持っているかを事前につかんでおかなければならない。

 

自社さえ良ければ、という自社都合、自社の勝手だけで進むわけではない。

企業経営は、自社だけで進めて行くことはできない。少なくとも事業を大きくし、拡げて行くためには、

他社の協力を得なければならない。

販売代理店を必要とすることもあるだろうし、生産のための協力企業を求めることもあるだろう。

仕入先もそうだし、印刷会社や会計事務所など事業に必須の業者もいる。

そうした周辺事業者の協力を得て、良き事業パートナーとして共に成長して行くためには、彼らの

ビジョンや戦略、長期展望などを理解し、共有しなければならない。

 

近所にあって便利だからとか、昔からの付き合いだからとか、安いからといった理由だけで付き合って

いては、共に成長するパートナーとしては物足りないことになるだろうし、こちらが提携や連携を求めて

いく場合にも、便利だとか安いということを武器にするだけでは、単なる業者扱いされて、とても対等な

パートナーとは呼べないものとなる。

 

相手が大企業、巨大ネットワークであったとしても、その戦略を知り、その戦略実行のために欠くことの

できない機能なり役割を自社が果たすことができれば、対等な提携も可能である。

そうした場合に、正面から中小企業がお願いに行っては、足許を見られて軽くあしらわれるのがオチで

ある。慎重に相手の情報を取り、人をたどり、相手の利害得失を考えてみる。

そういう時には、郷導(道案内役)を使えと孫子も説いている。

相手の戦略意図が分かれば、こちらがどういう価値を提供できるかが分かる。

充分価値があると思えば、誰を窓口にして、何を切り口にして、どう攻めるかをよく考えること。

ヘタな部署や人を窓口にしたら、他の道が断たれる。相手の組織が大きければ大きいほど、その窓口と

なる人の利害や立場も充分考慮しなければならないだろう。

こうした提携や連携、パートナーシップ推進で、問題となるのは、自社さえ良ければそれで良いという

考え方だ。たとえ、こちらが購買側であったとしても、お互いのビジョンや利害を踏まえて、Win-

Winの関係を構築しなければならない。

こちらに利の大きい話ほどつい「お願い」に行くことになりがちだが、一方的な「お願い」で事が運ぶよう

なら、そんな事は大した事ではないということだ。

すぐに近道、安易な道、楽な道を進もうとするのではなく、遠回り、難儀な道、手間のかかる道を進むよう

であって、実はそれが近道だったという展開に持って行くのが、迂直の計なのだ。

そして、武田信玄の旗印で有名な風林火山の一節は、現代の営業風林火山として読み替えてみたい。


「営業の速きこと風の如く、傾聴すること林の如く、提案すること火の如く、値引かざること山の如し。」


まず、営業で大切なのがスピード。速きこと風の如く、何事も速くやること。

顧客は忙しいのだ。こちらも暇な客を相手にしている暇はない。

顧客が3日かかるだろうと思うところを2日でやる。

それだけで「おぉ、速いじゃないか」となるし、こちらも業務効率が上がる。余計な金もかからない。

テキパキ、ハキハキとして、爽やかな風を客先に吹かせなければならない。

そういう意味でも風の如くありたい。

次に顧客の話を聴く。静かに聴く。素直に聴く。喋り過ぎない。

気持ちよく話してもらうために、まるで森林浴でもしてもらっているかのような心地よい傾聴姿勢が

必要だ。

相手のことを理解しよう、どうやったらお役に立てるか、という心情があってこその森林浴である。

顧客の話を聴き、相手の事情を理解したら、こちらがお役に立てることを、いざ提案である。

顧客を理解してこそ提案が許されるわけだが、提案する時には、火の如く熱い提案をしたい。

「お客様のためにお役に立つ」という熱い思いで提案せよ。自社の都合、自分の都合を押し付けるのでは

なく、「お客様にとって良いものだ」という確信がなければならない。

その確信があり、顧客の立場に立てば、自ずと熱い提案になるはずである。

売る気があるのか、ないのか良くわからないような気の抜けた、覇気のない事務的な提案で、人が動く

はずがない。理屈では人は動かないのだ。熱い思いをぶつけよ。

しかし、いくら顧客の立場に立つ、顧客の心情を理解すると言っても、過度な値引きを要求されたり、

過剰なサービスを強要されたりする場合には、値引かざること山の如し。ガンとして動いてはならない。

値引きとは、最も安易で、最も簡単な販促方法である。誰にでもでき、何の智恵も必要ない。

一度値引きをしてしまうと、必ず次も値引きを要求される。「今回だけ特別に」なんて言われても、

今回だけで終わった試しがないことは営業マンなら誰でも知っているはずだ。

値引きは顧客に「値引きシロ」があることを知らしめるだけで、決して感謝されたり評価されたりするもの

ではない。ヘタに値引きしたら、相手は口では「ありがとう、助かったよ」などと礼を言いながら、

腹の中では「ふっかけた見積りを出しやがって・・・」と思っているかも知れない。怖い怖い・・・。


営業風林火山を旗印にして営業部門を強化すべし。

 

 

この続きは、次回に。

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