書籍「10年後の自分」を考える技術 ③
ガイダンス 「危機感」がなければ、人は変われない
✔︎ 「シナリオ・プランニング」という考え方
将来起こりえる環境の変化を複数の「シナリオ(物語、ストーリー、脚本)」として
描き出し、そのシナリオごとに事業戦略や危機管理などの対処法を考えようと
いうのが、私の行っている「シナリオ・プランニング」の考え方である。
ひと言でいえば、たった一つの「未来」ではなく、いま現在想定できる「複数の
未来」について考えてみよう、ということだ。
「未来をどう考えるか」の一歩手前には、「そもそも未来を考える必要がある
のか」という問いがある。
✔︎ 真剣に「たら・れば」を考える
シナリオ・プランニングの真髄は、漠然と「こうあってほしい未来」を思い
描くことでも、「こうなるに違いない!」と未来をピンポイントで予測する
ことでなく、「起こりえる複数の未来」を想像力を働かせて真剣に考え、
その対処法を事前に考えておくことがある。
「もしこうなったら、どうする?」
「万が一ああなれば、何をすべきか?」
シナリオ・プランニングとは、こうした「たら・れば」について真剣に考える
思考法だと言い換えることもできるだろう。
✔︎ 今を生きる若者にこそ「未来を考える思考法」は必要
私はこの考え方は、企業ではなく個人にとっても有効だと思っている。
私は若いときには、こうした「視野を広げてまわりを見回し、未来の幅を考えて
〝複数未来シナリオ〟を考察する」という考え方を知らなかった。
シナリオならずとも、未来について考えをめぐらす思考法を知っていれば、
自分の進む道についてもっと深く考えていたかもしれない。
シナリオ・プランニングの考え方は、ぜひ若い人にこそ知ってもらいたいと思う。
✔︎ 「自分の未来は自己責任」の時代
もはや「一様序列」「右へ倣え」といった時代ではない。
皆がそれぞれの夢や目標を持って行動できる自由な時代になった。
しかし、逆に言えば、自分で夢や目標を設定しないかぎり、悲惨な結末を迎える
時代でもある。
不確実性が高く情報過多の現代、刻々と変化している情報の読み方によって
大きく差がつく時代である。
自分なりに情報を読み解き、決断し、行動する内容によって、将来の姿が大きく
違ってくる。だからこそ、未来の可能性・選択肢がまだいくらでも残っている
若い世代には、未来を具体的に考え、行動を起こすための思考法が必要なのである。
✔︎ 学校では教えてくれない、だから自分で考えるしかない
それにしても、不確実性に対処する思考法や、自己責任で選択する考え方を、
どうして親や学校は教えてくれないのだろう。
それは、現代のように「不確実なシステム的に連鎖し合う社会」や「自分で
すべて決めていく社会」を、私たちが過去に生きたことがないからだ。
未来には「正解」としての模範解答がないのだ。
これだけ不確実性の高い今日、教えることができるのはせいぜい「考え方」なのだ。
手探りでも自分で考えて自分で決めるしかない。
今こそ、学校では教えてくれない「未来を読み、決断して動く力」を身に
つけなければならない。
✔︎ Why change? —なぜ変わらなければならないのか?
アメリカの心理学者クレア・グレイヴスは、個人の成長には3つの要素が
重要であると言っている。
それは、危機感、行動力、洞察力の3つである。
—-インターネットより抜粋—
危機感:今のままでは危ないという不安や緊迫感。
行動力: 目的のために積極的に行動する力。
洞察力: 物事を深く鋭く見抜く力、見通す力です。
観察しただけでは見えないものを、直感的に見抜いて判断する
能力です。
まず、このままではダメだという危機感がないと、現状に甘んじてしまって
成長できない。そして、危機感があっても一歩を踏み出す行動力がなければ、
不満を言うだけで終わってしまう。
最後に、洞察力がないと、行動を起こしてもそれが実を結ばない。
この3つのなかでいちばん重要なのは、何よりも最初の「危機感」だ。
企業へのコンサルティングでも、企業変革のプログラムの第一番は、
「Why change?」——なぜ変わらなければならないのか、である。
なぜこのままではダメなのかを徹底的に議論して、腹に落ちるようにすることから
始める。
最初の段階で「健全な危機感」を作り込むことに失敗すると、企業変革も成長も
腰砕けで終わってしまう(ちなみに「健全でない」危機感とは、ただ不安に
怯えるだけのことを指す。
そういった危機感は、何かを変えていこうという行動にはけっして結びつかない。
私は企業の研修などでよく「嘘でもいいから、なぜこのままではダメなのかと
いうロジックをつくりなさい」と言う。
この続きは、次回に。