書籍「10年後の自分」を考える技術 ㉚
✔ まず「やらないこと」を決めよう
コンサルタントとして企業の戦略策定のお手伝いをするとき、よく「戦略とは
何か?」と聞かれることが多いが、私はいつも、
「戦略とは、やらないことを決めること」だと答えている。
戦略とは企業の意思決定のことだ。
そして意思決定(Decision)という言葉には、もともと「切って離す」と
いう意味がある。
何を「切って離す」のか?
さまざまなモノゴトに優先順位をつけ、大事なものとそうでないものを
分けていく。
企業にしろ個人にしろ、やりたいことすべてを行うことはできない。
お金も時間も労力も有限であり、それらの「資源の制約」のなかで「何を
やるか」「何に集中すべきか」を決めていかなければならないのだ。
そこで重要になってくるのは、まず「やらないこと」を決めることである。
最初に「やらないこと」が明確になると、「やるべきこと」もはっきり
してくる。
優先順位をつけて、その優先度の低いものは「切って離す(捨てる)」
決断力が必要なのだ。
できないことを計画するくらいなら、できることにフォーカスして
計画すべきなのである。それこそが「戦略」だ。
✔ 人生は有限だから戦略が必要になる
こういった問題は、企業戦略の場面でも出てくる。
資源が有限な状況下では、どちらかを選択せざるをえない。
30歳くらいになると、社会のこともだいたいわかってきて、自分の人生の
可能性が無限ではなく有限だということが実感できるようになる。
学生や若手社会人のときのように、「自分は何者にでもなれる!」という
淡い期待はしなくなる。
10年なんてあっという間、人生なんてあっという間、ということもわかってくる。
そこで、「自分の人生」や「家族の人生」という限られた資源(時間やお金や
労力)をどう分配していくか、という「戦略」がとても重要になってくるのだ。
すべてができないなかで、本当にすべきことはなんなのか?
そこを真剣に考えないと、本当にあっという間に40歳になってしまう。
そのときに後悔しても、時間はけっしてあと戻りはしてくれない。
やりたいことすべてをやることは到底できないと考えよう。
やらないことをしっかり決めて過ごす10年と、なんでもやりたいと漠然と
考えながら過ごす10年とでは、大きな差がつく。
後者は、何も達成できない可能性が高い。
✔ 人生の中長期戦略
さて、ここまで「つながり思考力」「先読み力」「一歩を踏み出す行動力」の
3つの力について話をしてきた。
この本で私が強く言いたいのは、企業が中長期戦略を立て、時代の変化に
合わせてそれを柔軟に変えていくように、「人生にも中長期戦略が必要で
ある」ということだ。
「幸運の女神には前髪しかない」という格言がある。
事前に女神の姿を見る心の準備があれば、向かってくる女神の前髪を
つかむことができるだろう。
しかし、幸運の女神が通り過ぎたあとでは、いくらその姿が見えても、
うしろ髪はないため、もうつかむことはできないという意味だ。
だからこそ、「事前に」考えておく必要がある。
いま、「人生」とか「幸運」といった言葉を使ったが、「良い人生」とは、
はたしてどういうものだろうか?
前に「のちのち後悔しない人生」だという話をしたいが、別の視点から
もう一度考えてみたい。
この続きは、次回に。