危機の時代 ジム・ロジャーズ ⑭
・良い投資家になるにはバランスシートを読もう
良い投資家になりたいなら、バランスシート(貸借対照表)を読むことを
学ぶ必要がある。
バランスシートから始めれば、投資を考えている会社が健全かどうかを
知ることができる。
バランスシートは損益計算書よりもはるか重要になる。
健全な会社かどうかがわかるからだ。
損益計算書よりもバランスシートに企業の経営の本質は現れる。
だから、私はいつも企業分析をバランスシートから始める。
人々と話すときも、数学を理解しなければならないといつも伝えている。
誰も難しい数字を理解したがらない。
バランスシートを読んで分析するのは大変な作業だからだ。
アニュアルリポートには、財務諸表の「注記」がある。
アニュアルリポートを読む場合、この注記にこそ気をつけるべきだ。
多くの人は気にも留めないが、そこに書かれている情報は、投資に役立つ
ヒントで満ちている。
これは骨の折れる仕事で、普通の人はやりたがらない。
書かれている内容は退屈で複雑だ。しかし、貸借対象表と注記の内容を
理解できれば、会社の実像が見えてくる。
だから売上高や損益が書かれている損益計算書よりも、ずっと大事で、
最も重要なことだ。
こんな退屈な仕事をするよりも、アメリカン・フットボールや野球の試合を
見たいと思う人が多いのも当然だろう。
とりわけ企業を分析するには、借金の状況を理解する必要がある。
その情報は全てバランスシートにある。
・株式インデックスへの投資は有効な手段
多くの研究成果は、ほとんどのプロの投資家の投資パフォーマンスが、
株価平均よりもよくないことを示している。
債券や商品や通貨に関しても同じことが言える。
そうであるならば、株式の場合、株価平均に連動する株式インデックスに
投資した方がいいことになる。
ほとんどの投資家は、(日本なら日経平均株価や東証株価指数=TOPIX等の
動きに連動する運用成果を目指す上場投資信託である)ETFのような商品に
投資した方がいいだろう。
これは単純だが、真実だ。
ほとんどの投資家は個別銘柄に投資するよりも、株式インデックスを購入する
ほうがいい。そうすれば、個別株の上昇や下落にやきもきすることなく、
バーをはしごしたり、サッカーや野球を観戦したりすることができる。
株式に限らず、債券や商品、通貨のインデックス投資も同時に有効な手法だ。
数々の失敗を通じて、私は多くのことを学んだ。
繰り返しになるが、自分が何をしているか分からないときは投資せずに、
落ち着いてタイミングを待つことだ。
誰かの話に惑わされてはならない。
私は自分自身の経験から、ほかの誰かの意見に耳を傾けるたびにしばしば
間違いを犯すことを学んだ。
自分が何をしているか分からないと確実に失敗するので、そういう時は
何もしない方が良いことを学んだ。
1年間に2%を失うよりも、1%を稼ぐ方がベターなのはいうまでもない。
何もしない方がいい時もある。
あなたがお金を儲けられるという自信が持てるまで待ってから、投資を
すべきだ。
・何をしているか分かっていない人が多い
最初は、誰もが私よりも賢く、経験豊富で、優れた教育を受けていると
身構えていた。だが、多くの投資家が、自分たちが何をしているのか良く
分かっていないことに気づくのに、長くはかからなかった。
投資の世界では、自分が何をしているか理解していない人がどれほど多い
ことか。彼らはみな同じように考え、同じ考えに従う。
私はロッキード株に投資した頃に、投資家が集まる夕食会に参加した。
当時、多くの名の知れた投資家が集まり、投資のアイデアについて議論
していた。私はその会に最年少のメンバーとして参加したことを今でも
覚えている。
そこで私は「ロッキード株を買うべきだ」と言った。
すると、テーブルの反対側にいた賢い投資家として有名な男が、みんなに
聞こえるような大声でこう話した。
「誰がそんな株を買うものか」と。とても恥ずかしかった。
私はそこで一番若く、最も経験の浅い投資家だったからだ。
しかし、ロッキード株が100倍になったとき、彼はもう何も言わなくなった。
大事なのは、自分自身の経験と読書などから学び続けることだ。
私は今でも過去の証券市場の歴史について書かれた本を好んで読んでいる。
過去に起こった多くのことを知ることができるからだ。
この続きは、次回に。