お問い合せ

危機の時代 ジム・ロジャーズ ㉙

・農業にはチャンスがある

 

私は日本で有望だと考えている投資分野は農業だ。

日本の農業従事者の平均年齢は67歳(2018年時点)と非常に高い。

世界的に見ても、農業に関心を持つ人は少なくない。

米国では農業を勉強するよりも広報・PRの勉強をする人が多いほどだ。

英国でも農業従事者の自殺率は高く、関心は低い。

インドでも、借金を苦にした農業従事者の自殺率が高くて、社会問題に

なっている。政府が農民の借金の帳消しを約束するケースが出ているほどだ。

問題は、人口が高齢化しているために農業従事者が足りなくなることにある。

日本は農業分野で技能実習生という形で外国人を受け入れるようになっているが、

まだ限定的であり、人手不足を解消できているとは言えない。

日本が得意とするロボット技術をもっと活用すべきだろう。

ロボットやドローン、AI(人工技能)を活用して、農業のイノベーションを

起こせば、ビジネスチャンスは大きいはずだ。

 

・外国人に門戸を開かない国は衰える

 

強くて偉大な国は移民に支えられて繁栄してきた。

ローマ帝国が良い例だ。

ローマ帝国では、外国人が市民権を得て、元老院の議員にもなれるように

していた。ローマの強さは多様性にあったという意見に私は同意する。

移民がやってくる国には何が起きるのか。

自分の国を捨てて、移住してくる外国人は必死になって働き、豊かになろうと

する。子供を育て、良い教育を受けさせようとし、お金持ちになりたいと

強く願う。

好き好んで海外に移住しようとする人は普通ならいない。

自分がもともと住んでいた国で良い人生を送れるのに、すべてを捨てようと

する人は珍しい。もっと豊かになりたい、幸せになりたいと考えて、

人々は他の国に移住する。

だからこそ、人々が逃げ出していく国は衰退する。

衰退する国は、たいてい同じような道筋をたどる。

国民が怠け者になり、身の丈に合わない額のお金を借り、働きたがらないように

なる。

国家の繁栄は永遠には続かない。そして通常、人々はもっとお金が儲け

られそうな国に移住したいと願う。だから、豊かな国が移民を引きつける。

世界中の多くの人々が、今でも米国に行きたいと思っている。

米国には今でも「アメリカンドリーム」が存在し、お金持ちになれる可能性が

高いと思っているからだ。

時代が違っても、移民がやってくる国が栄えるのは歴史の必然だ。

より豊かな場所に行きたいというのが人々の考え方であり、働き方だ。

繰り返しになるが、これは私の意見ではなく、歴史から見える事実だ。

 

・移民の力で繁栄してきた米国の変化

 

米国も世界中から多くの移民を受け入れることで発展し、繁栄してきた。

外国人を歓迎し、彼らに土地を与えてきた。しかし、トランプ大統領は、

外国人に寛容ではない。メキシコ国境に壁を建設したりしている。

経済が悪くなると、外国人への風当たりはますます厳しくなっていくだろう。

 

我々は外国人に対して非常に差別的になることがある。

シンガポールも外国人を受け入れるが、彼らは外国人を選別している。

米国が宣伝してきたのは、非常に偉大な自由民主主義と広大な土地が

あることだった。移民たちが入国した当時、米国は非常に魅力的な国だった。

しかし、19世紀には、女性も、黒人も、アジア人も差別されており、選挙の際に

投票できなかった。参政権すらなかった。

 

今はドイツのメルケル首相も移民の受け入れに取り組んでいる。

ドイツは出生率が低下しているので、積極的に外国人を受け入れてきた。

メルケル首相は、エネルギーだけでなく、外国人を必要としている。

しかし、ドイツには外国人を差別する人も多い。

 

・歴史から教訓を得よう

 

私が歴史を好きなのは、そこからさまざまな教訓が得られるからだ。

世界はどんどん変化するが、人間の本質は変わらない。

同じような行動が常に繰り返されていることを、あなたは知ることができる。

テクノロジーが何であれ、人々は新しく興奮できるものにより多くのお金を

払うものだ。だからテクノロジー企業は、常に市場価値のリーダーになる。

かつてはラジオであり、固定電話だった。

世界は、これまでもこれからも、新しいテクノロジーに熱狂するだろう。

未来のテクノロジーが何であれ、市場で買われるのは、それを最も上手に

実現できる成長の可能性が高い企業だ。

新しいテクノロジーはそれが何であれ、世界を変える可能性がある。

 

今はブロックチェーンが、世界を最も興奮させている技術の1つだろう。

ブロックチェーンとは、全員がすべての取引履歴を共有し、改ざんが

できないようにする「分散型の取引台帳技術」だ。

金融だけでなく、医療でも、小売業でも、不動産の契約でも、既存のシステムが

ブロックチェーンに置き換えられる可能性がある。

今は違っていても、きっと将来はそうなるだろう。

 

バイオテクノロジーも注目すべき分野で、新しい発見が相次いでいる。

明らかにそれはイノベーションだ。

AIの会社にも投資家は莫大なお金を注ぎ込んでいる。

なぜなら、AIのスタートアップは新しく刺激的で、これまでの企業とは

異なっていて珍しいからだ。さらにドローン企業に、多額の資金を投じる

投資家もいるだろう。つまり、テクノロジーが投資を集められるかどうかは、

それが新しくてエキサイティングであるかどうかに依存している。

 

・次に戦争が起きる地域

 

中東は、次に大きな戦争が起きる場所になる可能性が高い。

中東では、アラブ人とイスラエル人だけでなく、(米国やロシアなど)ほかの

勢力も過ちを犯している。つまり中東では多くの人が失敗を犯している。

中東は、現代の火薬庫だ。現在、中東の国々は明らかに不安定だ。

かつて第一次世界大戦の発火点となったバルカン半島と、似たような

不安定さを感じる。

第一次世界大戦では、多くの人が聞いたことがなく、どこにあるかも

知らない国で起きた事件が発端になり、世界はあっと言う間に戦争状態に

陥った。当時、オーストリア皇帝は自分の息子である皇太子がサラエボで

暗殺されて、帝国が瓦解することを恐れていた。

当時のオーストリアは大国で、セルビアに10カ条の最後通牒を突き付けた。

しかしセルビアは一部の要求を受け入れず、オーストリアは宣戦布告した。

小さい事件から始まった戦争だったが、誰もが6カ月後に、いったい全体

どうしてこうなったのか、頭を抱えることになった。

残念なことに、政治家も官僚もなすすべがなかった。

「これは何かの間違いだ。戦争をやめよう。我々はあまりにたくさんの

若者たちを殺している」と考えるのは当然だったが、止めるには遅すぎた。

 

・21世紀のサラエボになる可能性

 

それが今度は中東になるかもしれない。

中東のどこかの地域が、21世紀のサラエボになる可能性がある。

なぜなら、非常に多くの人々がとても多くの間違いを犯し続けているからだ。

また、石油が存在し、イスラエル人もいるので、中東のすべての状況が

不安定だ。

次の大きな戦争がどこから始まるのかを言わなければならないとしたら、

それは中東で起きる何かの事件になるかもしれない。

それは韓国ではなく、東アジアで同様の問題が起きるリスクは相対的に低い。

火種は中東のどこかにあると私は思っている。

世界の多くの人が聞いたこともないような場所が、サラエボやセルビアのように

有名になる可能性がある。

もちろん戦争は間違っている。しかし第一次世界大戦が不条理だったように、

間違った理由から戦争は起きるものだ。

 

 

この続きは、次回に。

 

 

 

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