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危機の時代 ジム・ロジャーズ ㉚

第7章 未来の正しい見方—-社会の常識を疑え

 

・オリンピックが国を救ったことはない

 

日本はしばらく前まで2020年夏に予定されていたオリンピックに沸き

返っていた。結局、新型コロナウイルスの問題で延期されたが、ここで

気を付けるべきことがある。

過去100年を振り返ると、オリンピックは国を救ったことがない。

多くの国がオリンピックを開催したが、どの国も大きくは変わらなかった。

数カ月間、開催する国と都市は熱狂に包まれ、国民も政治家も喜ぶだろう。

現実にはオリンピックのためにインフラなどに投資する必要があり、

そのための借金が膨れ上がることになる。

誰もがオリンピックを知っている。

みんなが知っていることに投資すれば、おそらく成功することはないだろう。

あなたが成功したいと願うならば、誰も知らない何かを見つける方がいい。

例えば、政府が何かに多額のお金を費やし始めていることに気づいたら、

それは何かのチャンスかもしれない。しかし誰もが熱中して買っている

ものを見つけたら、それを売ることを考えた方がいい。

みんなが同じように考えていて、みんなが愛しているものは、逆にうまく

いかなくなるかもしれないと考えた方がいい。

 

・ユニコーンはバブルだった

 

中国のアリババグループへの投資を成功させたことで知られるソフトバンクは、

数多くの(企業価値が1000億円を超える有望企業)ユニコーン企業に投資

している。だが、こうしたユニコーン企業は本当にそこまで高い価値が

あるのだろうか。

米シェアオフィス大手のウィーワーク、米配車大手のウーバーテクノロジーズ—-。

それらの多くは、すべて同じような会社に見える。

 

似たような状況は過去にもあった。

例えば、日本の1980年代後半のバブルを振り返ると、同じようなことが

起こっていた。似たような企業の株がどれもとんでもない価格で取引

されており、誰もが「日本は違う」と言っていた。

 

1999年、米経済誌のウォールストリート・ジャーナルが「ニューエコノミー」に

ついて記事を書き始めた。

彼らは「ニュー」を大文字にし、「エコノミー」も大文字にした。

すべてがそれまでとは異なる、新しい革命的な経済が生まれていると強調

したかったからだ。しかし誰もがインターネット企業に熱狂するドットコムの

バブルは、ほどなく崩壊した。

ウォールストリート・ジャーナルは、ニューエコノミーという言葉を

使わなくなった。これらはすべて過去に起きたことことだ。

誰もが同じような過ちを繰り返す。だから心配する必要はない。

人間にはたくさんの根拠のない熱狂に酔ってしまうものなのだ。

 

・アリババ株への投資はいいアイデアではない

 

暗号通貨とはおそらくそのようなものの1つだ。

 

ブロックチェーンも革新的な技術かもしれないが、冷静な目で見る必要がある。

ブロックチェーン技術の多くは、グーグルやアマゾン、マイクロソフト、

ソニーといった大企業の関連会社が提供している。

私はまだブロックチェーンでこれという企業に出会っていない。

それは独立していて優れた技術を持つ、中小のブロックチェーン企業で

なければならない。

 

ブロックチェーン技術に投資するためにアリババ株を購入するのはいい

アイデアではない。アリババ傘下にすぐれたブロックチェーン企業が

あっても、それは独立した企業ではないからだ。

ブロックチェーンのためにアリババに投資するのは良い方法ではない。

ブロックチェーンは私たちが知っているすべてを変える技術だろう。

その動きはすでに始まっている。しかし、どこに投資すれば良いかは

まだ分からない。

 

誰もが大騒ぎするバブルの時はどう行動すべきなのか。

投資家の観点から話をしよう。

バブルが起きている時に、何かを購入しても、お金を稼ぐことは難しい。

例えば、1989年に東京の不動産を購入した場合、その不動産を持ち続けても、

儲けることはできなかったはずだ。

一方、バブルの前に購入して、バブルの時に上手く売り抜けられる人は

ほとんどいない。そうできる人は素晴らしい投資家だ。

バブルの前に安価で買い、バブルの一番のピークで売ることができれば

最高だろう。バブルが起きるたびにそれを繰り返せば、あなたは大変な

金持ちになれるはずだ。

 

 

この続きは、次回に。

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