お問い合せ

危機の時代 ジム・ロジャーズ ㉛

・米国の教育を高く評価するのは間違い

 

あらゆる国において重要なのが教育だ。

米国の教育は世界的に高く評価されており、大学ランキングでは常に上位に

並んでいる。しかし最近、「米国の大学卒業生の50%が新聞の社説を理解

することができない」という調査結果を目にした。

社説に何が書いてあるのか分からない読者が多いというのだ。

社説が読めない人は、クレジットカードの申請書を読むことができない

可能性がある。これは大変な問題だ。

高等教育を受けていることは、本人の実際の能力よりもはるかに優れた

PR効果を持つ。

 

多くの大学教授は、ただ型通りの授業をするだけだ。

ほとんどの米国人は、大学に通ったとしても、素晴らしい教育を受けて

いるわけではない。そこに問題がある。

 

一方、中国は次の偉大な国になるだろう。中国は最終的には今よりも

はるかに存在感が高まると、私は確信している。

素晴らしい国には優れた大学がある。

中国の経済力が高まり、発展を続けると、同国の大学が世界で最も重要な

大学と見なされると、私は考えている。

経済の繁栄と、高等教育機関の発展には密接な関係がある。

だから中国を代表する大学である、清華大学や北京大学の地位が上がるのは

当然だろう。

米USニューズ紙の大学ランキングで、清華大学は米マサチューセッツ

工科大学( MIT)を抜いて、工学研究の分野で世界最高峰の大学になった

こともある。

私は英国のオックスフォード大学とケンブリッチ大学は素晴らしいと

思っていた。実際に私はオックスフォードに進学して、素晴らしい時間を

過ごした。ただ、今から考えると、私は北京に行って清華大学か北京大学に

入学すべきだった。

当時、私は21歳で、中国の可能性について何も知らなかった。

 

・危機に瀕する米国の大学

 

今、米国の大学は多くの問題を抱えている。

正規教員の在任期間は長く、大学側は彼らを解雇することが通常できない。

米国の大学のコスト構造は非常に硬直的で、給与水準は高い。

 

米国の大学で学ぶためにかかる費用は高額で、今や驚くべき水準にまで

値上がりしている。コスト構造が非常に高くなっているのはなぜなのか。

教授の在職期間が長いため、彼らは一生懸命働く必要もなく、ぬるま湯に

つかっているからだ。だから大学教員は自分たちの仕事が好きで、そこから

離れようとは思わない。この結果、米国の教育は非常に高額になっており、

それを継続させるのは難しい。米国ではなく、他の国の大学に進学すれば、

かかる費用は大幅に安くなる。

米国経済には問題が多いので、環境が激変すると、多くの米国の大学が

窮地に立たされるだろう。世界的に有名な一部の大学は例外かもしれないが、

大学システム全体が行き詰まりつつある。倒産する大学も出ているほどだ。

高いコストを賄えないようになると、最終的には大学は破綻せざるを

得なくなる。大学が教授に対し、「あなたの給料を支払うことができなく

なった」と言っても、力がある教授ならほかの大学に移るだろう。

しかし、他大学に移ることができるだけの能力がない教授も少なくないはずだ。

 

教育はどんどんオンライン化する

 

教育はどんどんライン化されていく。

今、あなたはプリンストン大学で教えている内容とほとんど変わらない

授業を、はるかに安い費用で、オンラインで受講することができる。

最終的に、米国の何千もの大学で学ぶ学生たちは、その意味を理解する

だろう。例えば、スペイン語を学ぶために大学に行く必要は明らかにない。

自宅で、自分のコンピューターで学ぶことができる。

会計を学ぶために大学に行く必要もない。

パソコンはおろか、スマートフォンでも学ぶことができる。

大学で学ぶコストがどんどん高くなる一方、オンライン講座の費用は

どんどん安くなるので、ますます多くの大学が苦悩することになるだろう。

教育のオンライン化が進むことで、学生が興味を持つほとんどのテーマに

ついてオンライン経由で学ぶことができるようになっている。

大学はおそらく18歳くらいで入学する若者たちが集まって交流するだけの

場所になるだろう。

これからの大学は、おそらくオンライン授業をもっと活用せざるを得ない

だろう。米国の大学は、スペイン語の教員を2万人も必要としないはずだ。

優秀なスペイン語の先生1人がオンラインで教えればいい。

どうして2万人ものスペイン語教授が必要なのか。私にはさっぱり分からない。

それは会計学でも同じだ。会計学の教授も多いが、2万人が必要なわけでは

決してない。会計は決して難しくない。

素晴らしい先生にオンラインで講義してもらうようにすれば、コストは

はるかに安くなる。

 

 

この続きは、次回に。

 

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