「D・カーネギー 人を動かす」⑩
3. 誤りを認める
● 自分が悪いと知ったら、相手にやっつけられる前に自分で自分を
やっつけておいたほうが、はるかに愉快ではないか。
他人の非難よりも自己批判のほうがよほど気が楽なはずだ。
自分に誤りがあるとわかれば、相手の言うことを先に自分で言って
しまうのだ。そうすれば、相手には何も言うことがなくなる。
十中八九まで、相手は寛大になり、こちらの誤りを許す態度に出る
だろう。
● 自分が犯した誤りを認める勇気には、ある種の満足感が伴う。
罪悪感や自己防衛の緊張がほぐれるだけでなく、その誤りから生じた
問題の解決にも役立つ。
● どんな馬鹿でも過ちの言い逃れぐらいはできる。事実、馬鹿はたいてい
これをやる。自己の過失を認めることは、その人間の値打ちを引き上げ、
自分でも何か高潔な感じがしてうれしくなるものだ。
● 自分が正しい時には、相手を優しく巧妙に説得しようではないか。
また、自分が間違っている時—-よく考えてみると、自分の間違って
いる場合は驚くほど多いものだ—-そういう時には、すみやかに自分の
誤りを快く認めることにしよう。この方法には予期以上の効果がある。
そのうえ、苦しい言いわけをするよりも、このほうが、よほど愉快な
気持ちになれる。
ことわざにも「負けるが勝ち」と言う。
【人を説得する原則③】
自分の誤りを直ちに快く認める。
4. 穏やかに話す
● 「相手の心が反抗と憎悪に満ちている時は、いかに理を尽しても説得
することはできない。子供を叱る親、権力を振りまわす雇い主や夫、
口やかましい妻——こういった人たちは、人間は自分の心を変えた
がらないことをよく心得ておくべきだ。
人を無理に自分の意見に従わせることはできない。
しかし、優しい打ち解けた態度で話し合えば、相手の心を変えることも
できる」
● 「〝バケツ一杯の苦汁よりも一滴の蜂蜜のほうが多くのハエがとれる〟と
いうことわざはいつの世にも正しい。人間についても同じことが言える。
もし相手を自分の意見に賛成させたければ、まず諸君が彼の味方だと
わからせることだ。これこそ、人の心をとらえる一滴の蜂蜜であり、
相手の理性に訴える最善の方法である」
● 太陽と北風が腕くらべをする寓話より
北風が「僕のほうが強いに決まっている。あそこにオーバーを着た老人が
いるだろう。僕は君よりも早く、あの老人からオーバーを取ってみせる」と
威張った。
太陽は、しばらく雲の後ろに隠れた。北風は勢いよく吹いた。だが、
北風が吹けば吹くほど、老人はますますしっかりとオーバーで体を
包んだ。
北風は精根尽きて、吹きやんでしまった。
そこで太陽は、雲間から顔を出し、老人に優しく微笑みかけた。
しばらくすると、老人は額の汗をふいてオーバーを脱いだ。
太陽は、優しい親切なやり方は、どんな場合でも、激しい力ずくの
やり方より、はるかに効果があるものだと北風に諭した。
● 一滴の蜂蜜のほうが、バケツ一杯の苦汁よりもたくさんのハエを捕らえる
ことができる。それを知っている人たちが、優しさと友情に満ちた行為の
効用を枚挙にいとまがないくらい実証している。
● イソップはクリーサスの王宮に仕えたギリシャの奴隷だが、キリストが
生まれる六百年も前に、不朽の名作『イソップ物語』を書いた。
その教訓は、二千五百年前のアテネにおいても、また現代のボストンに
おいても、バーミンガムにおいても、同じく真実である。
太陽は風よりも早くオーバーを脱がせることができる—-親切、友愛、
感謝は世の一切の怒声よりもたやすく人の心を変えることができる。
リンカーンの名言〝バケツ一杯の苦汁よりも一滴の蜂蜜のほうが多くの
ハエがとれる〟をよく心にとどめておいていただきたい。
【人を説得する原則④】
穏やかに話す。
この続きは、次回に。