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リテールマーケティング  ⑪

5. 変化する消費者の購買行動と企業のビジネスモデル

 

インターネット通販(以下、ネット通販と略)市場の伸展が続く状況のなか、

さまざまな業界においてネット通販へのシフトが急激に加速し、ここ数年で

小売業を取り巻く環境は激変した。

消費者は、リアルショップ(実店舗)へ出向いてショッピングを楽しみながら

購入するというこれまでのスタイルから、24時間、365日いつでも、どこ

からでも買物ができるようになった。

小売業はこうした変化をいち早く捉え、対応していくことが求められる。

第2節でもみたように、近年では、デジタル化の進展により、IoTやAIなどの

新技術を活用した今までにない新たなビジネスモデルも登場してきている。

ここでは、それらのなかからいくつか取り上げて概説する。

 

1. O2O

 

(1) O2Oとは

 

今日では、スマートフォンの普及やデバイスの多様化によって、消費者が

メディアに触れる機会が増えており、商品の購買にあたってネットショップと

リアルショップを行き来することが一般的となった。

 

O2Oとは「Online to Offline」の略称で、オンラインとオフラインを連携

させて顧客の購買活動を促進させるためのマーケティング施策である。

オンライン上の情報などで顧客の購買意欲を高め、オフラインのリアル

ショップで購買活動を行ってもらうことをねらいとしている。

代表的な方法としては、店舗で使えるお得な割引クーポンや、スマート

フォンのGPS機能と連動したチェックインクーポンの配信などが挙げら

れる。顧客を自店へ誘導するという視点からは、新規顧客が効果的なタ

ーゲットといえる。

たとえば、無印良品が運営するアプリは、メンバー会員限定のクーポンを

配信して「○○%オフ」を実施したり、位置情報を使って欲しい商品の在庫が

近くのどの店舗にあるのかがわかるようにしている。

 

(2) O2Oの特徴

 

マーケティング施策の効果が容易に測定できることがO2Oの特徴である。

たとえば、Web上で配信したクーポンを実際にリアルショップで使用した

人数を数えるだけで施策の効果を測定できる。また、クーポンの有効期限を

区切れば、一定期間内での効果を測定できるため、比較的低コストで即効性が

高い施策が実施できる。

半面、クーポンなどの特典がなければ商品を購入しないなど、長期的な

利益をもたらすリピーターの育成には効果が薄いことも指摘されている。

 

2. オムニチャネル

 

(1) オムニチャネルとは

 

近年、消費者は、リアルショップ、Webサイト、カタログ通販、テレビ

ショッピングなどさまざまな方法で商品を購入できるようになっているが、

購入方法や受け取り方法においてまだ満足していない消費者も少なくない。

すなわち、好きな時に、好きな場所で、好きな商品を購入し、好きな時に、

好きな場所でその商品を受け取りたいと考えている。

 

オムニチャネルとは、リアルショップとネットショップの区別をつけず、

あらゆる販売チャネルを統合し、どの販売チャネルからも顧客が同じような

利便性で、商品の注文、受取り、支払い、返品などができる流通環境の

ことをいう(オムニとは、「すべての、全体の」という意味)。

オフライン・オンラインを問わず、顧客へ多角的にアプローチして接点を

持つことにより、顧客の購買意欲を高めて売上の向上をはかる方法である。

オムニチャネルの取組により、顧客はさまざまなデバイスを通して、欲しい

情報を簡単に入手でき、その時々に応じて最適な購入および受け取り方法を

選択できる利便性を享受できる。

 

—-オムニチャネルの概念図、省略—-

 

(2) オムニチャネルのねらいと課題

 

オムニチャネルのねらいは、リアルショップとWebサイトが保有する顧客

情報や商品の在庫状況、ポイントなどのデータをシステムで統合してサー

ビスを提供することである。顧客は、オンラインもオフラインも意識せずに

商品を購入することができる。

こうしたユーザーフレンドリーの取組を徹底することによって、顧客に

「便利で楽しい。またここで買いたい」と思わせることができる。

それにより、顧客のリピーター化とファン化をはかり、ファンになった

顧客がSNSなどで好意的な情報を発信することで自社(自店)における

顧客の囲い込みがさらに進展し、その結果、長期的な売上高と利益の

増大が見込める。しかし、導入にあたってはシステム刷新や大幅な社内

調整が必要になり、O2Oに比べて即効性が劣るため、そのハードルは高い。

そのため、全国的な店舗網を持つ大規模小売店や、ネットショップ主体の

企業などに向いているといえる。

 

 

この続きは、次回に。

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