リテールマーケティング ㉜
4. ビジネス会話の新機軸!「大和言葉」入門
1. 大和言葉が注目されている理由
今日、友達にはもちろん、会社関係の人と連絡を取るときでもLINEや
メールを使うことが多くなっている。その際に、無駄な言葉を省き、短い
言葉だけで要件を伝えるようになったことで、「いつもの言葉ではキツく
聞こえる、味気ない」と感じている人が増えているという。
そのようなこともあって、近年、大和(やまと)言葉が注目されている。
大和言葉とは何か? 耳にしたことはあっても、実はその意味を知らな
かったり、誤解していたりすることが多いのではないだろうか。
美しい言葉は、正しく使ってこそ、ビジネス会話としても生きてくる。
たとえば、商談や取引の局面において、これまで使っていた言葉を大和
言葉で言い換えてみるとよい。美しい響きが取引先の担当者に新鮮さを
もたらし、ビジネス上の会話を潤してくれるだろう。
味わい深い“和”の表現をうまく使いこなせば、これまでとは違った印象を
残せるはずである。
2. 日本語の種類
日本語は、その生い立ちから、次の3つに分けられる。
① 大和言葉
和語。日本国有の言葉で、柔らかく、美しい響きが特徴である。
平安時代に宮中で使われた雅(みやび)な言葉を指すこともあるが、
一般には漢語と外来語を除いた日本語の語彙を指す。
■ 【語彙】ごい
● ある言語、ある地域・分野、ある人、ある作品など、それぞれで
使われる単語の総体。「語彙の豊富な人」「学習基本語彙」
● ある範囲の単語を集録し、配列した書物。「近松語彙」
② 漢語
中国語から採り入れられた言葉や漢字の字音で構成される語彙。
漢字を組み合わせて自在に新しい言葉を生み出せるため重宝だが、
大和言葉より響きが強く、やや硬い印象を受ける。
③ 外来語
中国以外の国々から採り入れられた言葉。
横文字で、一般にはカタカナで表記する。
古くはオランダ、ポルトガルから、明治以降はイギリス、アメリカ、
ドイツ、フランスから大量に伝来した。
簡単な例として、同じ意味のこれらの言葉を示してみる。
・決まり(和語)
・規則(漢語)
・ルール(外来語)
3. ビジネスに活用したい大和言葉
わたしたちは、これらを日常、特に意識することなく使っている。
しかし、近年では漢語や外来語があふれて大和言葉はあまり使われなく
なってしまった。
「万葉集」に収められた歌のほとんどが大和言葉である。
誰もが耳にしている「ふるさと」などの唱歌も、ほとんどに大和言葉が
使われている。声に出して読むと、耳に優しく響き、心に染みてくる。
ビジネス場面でも、漢語や外来語のなかに、「思いのほか(「意外」の
人)」「たまさか(「思いがけず」のこと)」「このうえない(「すごい」
のこと)」などの大和言葉を1つ挟むことで、聞き手の印象に残る。
表 4-1 ビジネスに活用したい大和言葉(例)
[大和言葉]
まろうど→意味は、客。語源などは、「まれ(稀)ひと」。
たまに来る人で、客人を指す。
手練れ→意味は、「優れた技術を持っている」。
語源などは、“名人”や“達人”などの漢語でも表現できるが、「手練れ」
「腕利き」などのように、体の名称を使った大和言葉のほうが、技を
繰り出す巧みな姿が生き生きと伝わってくる。
敷居が高い→意味は、「心苦しくて訪問しづらい」。
語源など、よく使われる慣用句だが、「あのレストランは高級すぎて
どうも敷居が高い」と使うのは誤用である。
恩師などのお世話になった人に不義理や失礼をしたままで心苦しい、
顔向けできないというときに使う。
また、大和言葉には、「行く」「来る」「すがら」など、時間を点では
なく、流れで捉えた表現が多い。
夕刻を“黄昏(誰そ彼)”と表すなど、詩的な表現も多く、実に味わい深い。
ビジネス上のことばを柔らかく表現するときに大和言葉を使うことに
よって、取引先にこちら側の知性と余裕を印象づけることができる。
表4-2 大和言葉による言い回し表現(例)
[一般的な表現]→[大和言葉による表現]→[効果]
・ご理解ください→お含み置きください→漢語でキッパリと言い切ると
角が立つ言葉を柔らかくする。
・ご推察ください→おくみ取りください→語でキッパリと言い切ると
角が立つ言葉を柔らかくする。
・ご足労いただき→お運びいただく→柔らかい響きが感じられるように
なる。
・お手数をかける→お手を煩わせる→柔らかい響きが感じられるように
なる。
・次第に→追い追い→大和言葉にはゆったりとした時間が流れている。
「慌てずに」の含身を感じる言葉。
・最終的には→行く行くは→単なる夢物語ではなく、実現するために
着実に歩を進めていくという意思の強さを表す言葉。
この続きは、次回に。