リテールマーケティング ㊲
(2) ソフト面(行動)による防犯対策
① 従業員の声掛け
来客前には、「いらっしゃいませ」などと顔を注視しながら積極的に声を
掛ける。また、多数の衣料を試着室に持ち込むなど、挙動不審な顧客には
躊躇することなく声を掛け、店舗の方針やマニュアルに従った対応措置を
とる。
表2-1 声掛けの具体例
「顧客の行動」→「声掛けの例」
・店内を徘徊している—「何かお探しでしょうか。何かございましたら、
遠慮なくおっしゃってください」
・多数の衣類を試着室に持ち込む—「恐れ入りますが、試着室への商品の
持ち込みは○点までとさせていただいておりますので、ご協力をお願い
いたします」
・トイレに未精算の商品を持ち込む—「ご精算前の商品をトイレに持ち
込まないよう、ご協力をお願いいたします」
・店内専用買物カゴを使用していない—「お手数ですが、当店では専用
カゴをご利用ください」
警視庁の調べによると、少年・青年・高齢者を問わず、店員の声掛けが
あると全体平均で65.6%もの人が万引きを諦めたという。
このように声掛けは効果的といえるが、「誰に声を掛けるべきか判断し
にくい」という点がむずかしい。
不審な挙動を取っている人物など、万引きを行いそうな人物を見分ける
のは容易ではない。
店舗形態や店舗規模にもよるが、前述の書店のような場所は、「邪魔を
されずに、静かに本を探したい」というニーズもあるため、だれでも構わず
声を掛けるような対応をすると、客足への影響が懸念される。
常に整理・整頓された売場を心がける。
② 商品の点検、整理の徹底
たとえば、衣服がきちんと畳まれずに棚に戻されたままになっているなど、
商品が乱雑な状態は、販売員の目配りができておらず、「万引きがしや
すい」といった心理状態を招き、万引きを助長するため、常に整理・整頓
された売場を心がける。
③ 従業員の適正配置
死角になりやすい場所や万引き被害の多い商品コーナーなどには、販売員を
固定して配置するなどする。
④ 警備業者などによる巡回強化
万引きをさせない環境づくりを念頭において、制服警備員による“見せる
警戒”を強化するとともに、従業員も常に「防犯腕章」を着装し、極力
店舗内の巡回に努める。
⑤ 従業員に対する指導の徹底
従業員個々の役割分担を決めて指導を徹底し、店舗一体となって万引きを
根絶するための組織風土を醸成する。また、携帯用のマニュアルを作成
して従業員に配布し、各人が常に携帯していつでも確認できるようにする。
⑥ 店内放送
顧客へのサービスの一環として、また、万引きを防止するための注意喚起
として、警備員が巡回している旨を定期的に店内放送で呼び掛ける。
表2-2 店内放送の具体例
「放送の目的など」→「放送の例」
・店員による呼びかけ→「お客様にお知らせいたします。当店では、
お客様に楽しく、安心してお買物をしていただくため、店員が
お客様お一人お一人に声をお掛けしております。
ご用の際は、お気軽にお申し付けください」
・警備員の巡回→「お客様にお知らせいたします。当店では、お客様が
安心してお買物を楽しんでいただきますよう、警備員が店内巡回を
行っております。何かございましたらお気軽にお声を掛けてください」
・多数の衣類を持込みの抑止—「お客様にご案内申し上げます。当店の
衣料品売場でご試着をご希望のお客様は、お近くの店員にお声を掛け
てください」
・専用カゴ—「お客様にご案内申し上げます。当店では、店内専用カゴを
ご利用くださいますようお願い申し上げます」
⑦ 警察への通報
万引き犯は、一度万引きに成功したり、捕まったとしても万引き商品の
買い取りで済ませてしまうと、その後何度も万引きを繰り返す可能性が
ある。万引きを発見したら、すぐに警察に通報し、被害の届出する。
この続きは、次回に。